こんなことを書いてます
M&A取引の種類(オークション型など)が環境DDに与える影響について
環境デューデリジェンスでは、DD期間に開示される情報の量や質、現地視察の有無、DD期間の制限などにより、最終的な評価の精度が左右されます。
どういったことが環境デューデリジェンスの評価に影響を与えるのか?
一般的に以下のような条件の資料や情報が環境デューデリジェンスでは有益な情報となります。
・開示される情報の量が多い。
・情報が詳細であり信頼性がある。
・情報の日付が直近である。
また、制限のない現地視察が可能、DD期間が長期間という条件が整えば、環境デューデリジェンスを実施する環境コンサルタント会社は、正確な評価を実施することができます。
一方で、評価に必要な重要情報が開示されない、情報がメモ書き程度、情報の日付が10年前、DD期間が極端に短い、現場視察ができないといった条件下では、制限された情報に基づく評価しかできません。
読者の方(あなた)ならイメージできると思いますが、いかがでしょうか?
例えば、10年前の土壌汚染調査報告書に“土壌汚染の可能性は低いです”といった記載があったとしても、その情報を信じますか?
あなたは信じないと思います。
そのうえ、現地視察ができないという制限が加わると現在の工場や土地の土壌汚染の評価はほぼ不可能になります。極端な話、買い手企業の買収判断の参考にはならないケースも考えられます。
つまり、M&A取引において“必要な情報や行動が制限される”という外的要因が発生した場合、環境デューデリジェンスのプロセスや評価に大きな影響を与えるということです。
この事実は環境シューデリジェンスを委託する企業側も環境DD業務を実施する環境コンサルタント会社も理解しておかなければなりません。
では、どんな条件下で上記の一般的な外的要因は発生するのでしょうか?
ひとつの例として、M&A案件の型式があります。
オークション型の案件?それとも1 on 1 型式の案件?
M&A案件を”型式”という観点から分類するとオークション型式の案件と1 on 1 型式の案件に分類することができます。
文章で説明する前に図でイメージを共有してみます
例えば、オークション型式の案件では、売り手企業が複数社の買い手企業を一度に相手にすることから、必然的に売り手企業の負担(情報開示などの作業)が大きくなります。
情報開示の遅延が発生したり、買い手企業の候補が複数社いることから各々の買い手企業のDDに関する要求依頼が売り手企業に受け入れられにくくなる傾向があります。
1人の人間が複数人の人間の話を同時に聞くことができないことと同じです。
さらに複数人の人間が別々の内容の話をし始めると、聞く1人の人間は少し時間をかけて各々の主張を理解しなければなりません。
私の経験では、オークション型式の案件でヴァーチャル データ ルーム (VDR) への関連資料のアップロードが極端に遅延したり、現地視察の実施を拒否されたり、視察場所や滞在時間を極端に制限されたことがあります。
しかし、全てのオークション型式の案件が常に買い手企業にとって上記のような悪影響を及ぼすわけではありません。
オークション型式のM&A案件は主流ですし、あくまでも私の経験に基づく1例です。
一方で、売り手企業と買い手企業が各1社ずつの案件 (1 on 1 型式の案件) では、M&A取引の進行の歩調を合わせることができるので、比較的制限事項などがない状況で環境デューデリジェンスを実施することができます。
また、オークション案件とは異なり、環境デューデリジェンスの初期段階から両企業間の「信頼」が構築しやすく、詳細な環境デューデリジェンス(例えば、フェーズII調査など)やPMIを見据えた交渉が実施できます。
私の経験上、売り手企業と買い手企業の信頼関係の構築は、M&A取引において非常に重要な要素です。
なんか環境デューデリジェンスって初めて知ったけど面白そうっとあなたが思ったのであれば、以下の記事から読んでみてください。もっと面白さを感じるかもしれません。
最後まで読んで頂きありがとうございました。