環境DDの雑学

【注目!】環境省 環境デュー・ディリジェンスの手引書を作成へ

環境省 環境デュー・ディリジェンスの企業向けの手引書を作成へ

 

環境省が環境デュー・ディリジェンスの企業向けの手引書を作成するとなれば、この環境デューデリジェンスの専門サイトで記事として取り上げないわけにはいきません。

 

早速、環境省のウェブサイトを拝見させて頂きました。

そして、先ず私がこの記事で最初に記載しなければならいことを発見することができました。

 

あなたも既にご存知のとおり、この専門サイトでは環境デューデリジェンスのことが説明させています。

 

しかし、この専門サイトで記載されている環境デューデリジェンスと環境省が企業向けの手引書を作成しようとしている環境デュー・ディリジェンスは内容が異なります。

 

まず、表記が異なります(笑)。

 

この専門サイト:環境デューデリジェンス

環境省           :環境デュー・ディリジェンス

 

ここから更に環境デュー・ディリジェンスの概要を中心に異なる点を書いていきますが、この記事を読む際は、どちらの環境DD(環境デューデリジェンスなのか環境デュー・ディリジェンス)を上記の表記で判断してください。

 

 

環境省の環境デュー・ディリジェンスの検討会の開催

 

環境省のウェブサイトでは、環境デュー・ディリジェンスに関する検討会開催についての情報が記載されています。

 

検討会が開催される目的は、私が個人的に整理すると以下のとおりです。

 

グローバルでは持続可能な社会実現に向けた取組が進んでおり、企業の環境報告にも大きな影響を与えています。

環境省も環境面で持続可能な社会実現に向けた取組を進めるために環境報告ガイドラインの 2018 年改定版を公表しています。

持続可能な社会実現に向けた取組を進める上で、自社のグループのみだけでなく、バリューチェーン全体を考慮することが重要性です。

バリューチェーンの中のサプライチェーンにおける取組の重要性は急速に認識され始めていますが、サプライチェーンマネジメントには確立された評価基準が存在しません。

サプライチェーンマネジメントを対象会社の信用調査等のプロセスとして規制する傾向がグローバルで強くなっており、環境面に関するサプライチェーンマネジメントの取組もそのあり方を明確にする必要性が高まっています。

環境デュー・ディリジェンスに関する検討会では、環境面に関するサプライチェーンマネジメントの方法論を整理し、バリューチェーンマネジメントのプロセスに組み込む形でサプライチェーンマネジメントを実行する企業やその対象となる事業者双方の実務に役立つ手引書の公表を目指します。

 

つまり、サプライチェーンマネジメントの方法論を整理して、環境デュー・ディリジェンスの企業向けの手引書を作成するということです。

 

 

上記の整理した文章の中で私が調べた言葉は以下のとおりです。

 

 

環境報告ガイドラインの 2018 年改定版 ← こちらを参照ください。

バリューチェーンマネジメントに関する記載があります。

 

 

バリューチェーン(価値連鎖):  バリューチェーンは私には少し難しいですが、私なりに整理すると以下のとおりです。

 

1つの製品がお客さんの手に届くまでの流れのそれぞれのプロセス(購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービス)やプロセス全体をサポートする活動(全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動)において、どこで付加価値が生み出されているのかや事業の強み・弱みを分析して、事業戦略の有効性や改善の方向を精査することです。

 

私のイメージでは普段見えないプロセスを図解して、見える化した上で本質的な有益機能を探すことです。

 

 

検討会は令和元年 9月26日から令和2年3月31日までの期間で計5回ほど開催される予定とのことです。

 

既に令和元年9月26日に第1回目の検討会が開催されています。

 

 

環境省の環境デュー・ディリジェンスの第1回検討会

環境省の環境デュー・ディリジェンスの第1回の検討会

 

第1回目の検討会の資料を拝見すると以下のことが理解できました。

あくまでも個人的な理解です。

不備があった場合、環境省さん、申し訳ございません…。

 

各国や地域の報告規制や環境面に関する取組

 

2010年から2019年にかけて多くの地域で、人権・環境・労働安全衛生・腐敗防止といった観点で調査結果の報告規制が作成されており、環境面でも2014年にEU、2017年にフランス、2018年にスイスで該当のマークが付いています。

つまり、環境面においてもグローバルで何かしらのサプライチェーン評価の取組が進んでいるということです。

 

報告規制から運用規制に移行するデュー・ディリジェンス規制

 

 

バリューチェーンマネジメント内のサプライチェーンの環境面の評価に関する手引きの必要性

 

上述のとおり、グローバルにおいてもサプライチェーンの評価(例えば、監査による評価など)の重要性が高まり、既に規制等が設定されています。

したがって、環境省は国内でも環境報告ガイドライン2018年版と関連付けてサプライチェーンの環境面の評価に関する手引きを作成する必要があると考えています。

 

なぜなら、サプライチェーンでの取組推進ツールであるサプライチェーンマネジメントには、確立された評価基準が存在しないために、企業や事業者が何をどこまで実施すればよいかが分からない状態になっているからです。

 

つまり、国内では環境面において何かしらのサプライチェーン評価の取組が進んでいないということになります。

 

ただし、私の経験上、外資系企業からの要望で既に人権・環境・労働安全衛生・腐敗防止といった観点で日本国内のサプライチェーン評価がサプライチェーンマネジメントの一環で実施されています。

 

私も既に複数のプロジェクトを経験済みです。つまり、実施されている事例は多数あるといことです。

 

 

環境デュー・ディリジェンスに関する手引書の基本方針

 

環境デュー・ディリジェンスに関する手引書では、基本的な考え方・要点の平易な説明が記載されます。そして、プロセスはOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)のガイダンスが参考にされます。

注意水準は実行企業の業種、規模、操業地域、事業環境を含めてリスクベースで作成されることになります。そして、プロセスの各段階について具体的な開示例(例示、実例)が示されます。

 

具体的な事例が開示されることは大変有り難いですね。

取組を進める上での基礎になります。

是非、多くの具体的な事例を開示してもらいたいですね。

 

 

既に記載していますが、手引書の位置づけはバリューチェーンマネジメントのプロセスに組み込む形でサプライチェーンマネジメントを実行する企業やその対象となる事業者双方の実務に役立つ手引書です。

なので、サプライチェーンマネジメントに関する評価プロセスの内容・機能等の説明が記載される予定です。

 

想定利用者は環境報告を実施する事業者、読者となるステークホルダーです。

特に中小規模企業への目線が重視されます。

 

大手企業には豊富な予算があるかもしれませんが、中小規模企業はそうはいきません。

なので、中小規模企業を対象とした手引書が作成されると多くの企業が取組を遂行していく流れになる可能性が高いですね。

 

そして、ESG課題への汎用性も考慮されます。ESGは時代の流れですね。

 

 

環境デュー・ディリジェンスに関する手引書の要素案

 

手引書の要素は以下の内容が想定されていようです。

 

【位置付け・概念整理】

🔹 手引書の位置づけ

・作成の経緯・目的等

・想定する利用者

・環境省ガイドライン各記載事項との関連性

 

🔹 DDプロセス規制の国際的動向

 

🔹 DDプロセスの基本的な考え方

・DD概念と歴史的変遷

・OECDのDDガイダンス

・DDプロセスを実行する際の要点

 

【取り組み】

🔶 バリューチェーンマネジメントへの組み込み

・サプライチェーンのDDプロセス

・バリューチェーン川下のDDプロセス

 

🔶 リスクマネジメントとDDプロセス

【個別テーマの解説・事例】

 

🔶 重要環境課題のDDプロセス

気候変動、水資源、生物多様性・・・・

 

ざっと、資料に目を通してみると、なんとなくですがESGの「E」の観点でサプライチェーンの実態を評価するという感じだと私は個人的に思いました。

 

この環境省 環境デュー・ディリジェンスの企業向けの手引書の作成は、今後も追跡していきます。

 

 

環境デューデリジェンスと環境デュー・ディリジェンスの違い

環境デューデリジェンスと環境デュー・ディリジェンスの違い

 

ところでこの記事の始めに書いたこの専門サイトで記載されている環境デューデリジェンス環境省が企業向けの手引書を作成しようとしている環境デュー・ディリジェンスは内容が異という点ですが、この専門サイトの記事を読んでおられるあなたなら既に理解されていますよね。

 

 

この専門サイト:環境デューデリジェンス

→ M&A案件のDD期間に実施する対象となる土地や工場の環境面の負債を評価するのが、この専門サイトで表記されている環境デューデリジェンスです。

 

 

もし、あなたが「M&A案件の環境デューデリジェンスって何?」となった場合、以下の記事をお読み下さい。

 

【必読】環境デューデリジェンス(環境DD)とは何か? - 環境DDの概要 - 
【知っていますか?】環境デューデリジェンスの概要【必読】環境デューデリジェンス(環境DD)とは何か? - 環境DDの概要と重要性-  GoogleやYahooでの検索ワードが...

【知っていますか?】環境デューデリジェンスの概要

 

 

環境省:環境デュー・ディリジェンス

→バリューチェーンマネジメントのプロセスに組み込む形でサプライチェーンマネジメントを実行し、評価するのが環境省のウェブサイトで表記されている環境デュー・ディリジェンスです。

 

個人的にはESGの「E」の観点でサプライチェーンの実態を評価するという感じだと今の段階では考えています。

もちろん、もっと検討会が開催され内容が明確になってくれば私の考え方も変わるかもしれませんが…(笑)。

 

 

折角なので【M&A案件の環境デューデリジェンス】【ESGの「E」の観点でサプライチェーンの実態を評価すると私が勝手に考えている環境デュー・ディリジェンス】の違いを記載します。

まずは図で整理しています。

 

M&A案件の環境デューデリジェンスのイメージはこんな感じです。

 

Phase I ESAのまとめ

 

 

ESGの「E(環境)」の観点でサプライチェーンの実態を評価すると私が勝手に考えている環境デュー・ディリジェンスはこんな感じです。

 

ESGの環境面の評価

 

 

上記のE(環境)のみのイメージに社会性のSとガバナンスのGが加わると以下のような感じになります。

 

ESGデューデリジェンスのまとめ

 

では、ESGのE(環境)である環境はどういった項目を評価する必要があるのでしょうか?

 

例えば、サプライチェーンの工場等が位置している場所の….

 

❖ 水ストレスの状況

❖ 異常気象などに伴う操業の影響

❖ NGOからの問題提議

❖ 環境面に関する訴訟問題

❖ 現地の環境法令順守の状況

❖ 土壌汚染及び地下水汚染問題 など

 

評価すべき項目はたくさんありますが、ここからは具体的な例として、【水ストレス(水不足、水リスクを含む)の状況の確認】について記載していきます。

 

 

確認事項としては以下のとおりです。

 

・対象地の水ストレスの状況

・対象地の水ストレスに対する対策の有無

 

 

主な評価手法としては対象地域や対象工場の資料の精査インターネットリサーチマネジメントインタビューです。

 

日本国内でESGの「E(環境)」の観点でサプライチェーンの実態を評価することを想定すると対象地の水ストレスの状況の具体的な評価手法としては、以下の通りです。

 

対象地域や対象工場の資料の精査:

・対象地の地下水の取水等に関する公害防止協定の有無の確認

・対象地の年間の操業用水(上水又は工業用水)の使用量の確認

・対象地の年間の地下水からの取水量の確認 など

 

インターネットリサーチ:

・対象地周辺の自然環境保護地域の有無の確認

・対象地域の降水量、対象地域に位置する貯水ダムの貯水状況の確認

・対象地域の浄水場の処理能力(1日あたりの処理量)の確認

・対象地域の上水システムの普及率 など

 

マネジメントインタビュー:

・BCP計画(Business Continuity Plan:事業継続計画)の確認

・緊急時の代替案の確認

・定常的な水管理プログラムの確認 など

 

実際には、サプライチェーンの環境面のリスクを未然に防ぐとなると多くの時間とコストを費やすことになります。

さらにサプライチェーンは数が多いですからね…。

確かに統一された手引書が必要になりますよね。

 

最後にまとめ

 

上述の通り、サプライチェーン企業の環境面のリスクを未然に防ぐとなると多くの時間とコストを費やすことになります。

 

リサーチには多くの時間が必要ですし、法規制の順守確認では現場レベルでの判断が必要になります。

さらにISO14001を取得しています!と言いながら、法規制遵守が疎かになっている企業や工場は多いです。

 

土壌汚染問題に関しては、土地取引に関する契約書のレビューをしなければならないこともあります。その際は弁護士先生の力が必要になります。

 

したがって、多くの企業がサプライチェーンの工場や企業に対するCSR調達ガイドラインの周知や環境面や労働安全衛生面、社会性面などの質問を含めたアンケートの実施のみの取組で終わってしまっているのが現状だと思います。

 

さらに評価が非常に難しいのもネックです。

私は難しいと表現していますが、上述の水ストレスの例でもそうですが、具体的な評価手法は設定することができるものの、定性的な評価になります。

もちろん、定量化することも可能ですが、その定量化の仕組みを作成するのは非常に困難です。

 

したがって、経験上、私は三段階評価(高リスク、中リスク、低リスク)の設定がベストだと考えています。

ただし、三段階の各々定義は、本質的な点を考慮して作成する必要があります。

 

なんだかんだで色々なハードルが高いということを書きましたが、環境省 環境デュー・ディリジェンスの手引書には期待しかないですね。

ただ、環境デュー・ディリジェンスのディリの部分は、言いづらい…(笑)。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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