環境DDの油汚染

油汚染土壌と国内の環境デューデリジェンスについて

油汚染土壌と国内のM&A環境デューデリジェンスについて

 

土壌汚染には、実は色々と種類があります。

どういうこと?となる読者の方もおられると思います。

 

種類と言うと誤解を招くかもしれませんが、例えば….。

 

・特定有害物質に指定されている化学物質による土壌汚染

・放射線物質による土壌汚染

・油による土壌汚染

 

読者の方は「ああ、なるほど!」となられたと思います。

そうです。色々な物質により土壌が汚染され、土壌汚染が発生することにります。

 

そして、その各々の土壌汚染に関して、調査方法や土壌汚染に対する考え方も異なってきます。

 

一般的に「土壌汚染」や「汚染土壌」という言葉が新聞やメディアで使用されますが、何によって汚染されているかということは、意外と重要なことです。

 

なぜ、重要なのか?

 

例えば、日本国内ですと特定有害物質に指定されている化学物質(テトラクロロエチレンや鉛やカドミウムなど)による土壌汚染に対しては、法律に従って調査をしたり、浄化対策を実施したりしますが、油による土壌汚染は土壌汚染対策法では該当しません。

 

大きな枠として存在する環境基本法には油汚染も該当する事になりますが、法律に基づいた土壌汚染調査では、油汚染は対象外ということになります。

 

少し技術的な話をすると、ベンゼンや鉛を含む油は土壌汚染対策法に基づく調査の対象になります。

 

この技術的な話は、この記事の中で書いてみようと考えています。

ざっくり整理しますと、土壌を汚染するモノが異なると、汚染の定義調査方法該当する法律汚染の評価方法が各々で違うということです。

 

 

そして、この記事の本題です。

油による土壌汚染は、どのように環境デューデリジェンスや一般的な土壌調査で評価されていくのかを、この記事では書いていきます。

 

茶ポール
茶ポール
なるほど。色々な土壌汚染があるってことか。
のみエコ
のみエコ
そうです。化学物質による土壌汚染もあれば、油による土壌汚染もあるということです。
茶ポール
茶ポール
土壌汚染は土壌汚染やと思ってたけど、どうもこの記事の始まりの感じは、各々の土壌汚染という考え方を持った方が良いってことやな?
のみエコ
のみエコ
そのとおりです。色々と異なる部分があるんですよ。特に油は、厄介なんです。
茶ポール
茶ポール
なんで厄介なんや?
のみエコ
のみエコ
フッフッフ。ヒントはこの記事の中にありますよ..。
茶ポール
茶ポール
クックック。そうきたか。

 

油による土壌汚染に関する法律がないってどういうこと?

 

上述のとおり、ベンゼンや鉛を含まない油による土壌汚染は、土壌汚染対策法の適用外になります。

うん?ベンゼンをや鉛を含む油とは何か?という疑問な生まれますよね。

 

答えの1つとしてガソリンがあります。

 

そうです。車の燃料となるガソリンです。ガソリンスタンドで購入できるガソリンです。

基本的にガソリンには、ベンゼンが含まれています。

もう1つの鉛は、日本国内で1975年に規制されるまで、有鉛ガソリンとして販売されていました。

少しインターネットで調べてみると1980年代までハイオクに鉛がわずかに使用されていたケースがあるようです。

ちなみに米国で有鉛ガソリンが規制されたのは1995年です。

 

ベンゼンや鉛を含まない油には、灯油や軽油、潤滑油(モーターオイル)、重油があります。

特殊なケースで、ベンゼンや鉛が混入しているケースもありますが、一般的には含まれていないと認識されています。

 

灯油や重油、潤滑油などは、人の生活に馴染みがあるものであり、製造工場などでは多量に使用されているケースもあります。

そんな灯油や重油が漏洩して、土壌に染みこんでしまった場合、油による土壌汚染がうまれることになります。

 

ただ、ベンゼンや鉛を含まない油は、上述のとおり、一般的には土壌汚染対策法の対象にはなりません。

なので、土壌汚染対策法では、油が混じった土壌を「汚染している土壌」として評価できないということです。

 

では、どのようにベンゼンや鉛を含まない油(以下、油とします)による土壌汚染を環境デューデリジェンスでは評価すべきなのか?

 

読者の方は何か良いアイデアがございますか?

ここからは少し私の経験上、得た話を書いていきます。

 

茶ポール
茶ポール
なるほど。油で土壌汚染対策法に関係するのがベンゼンと鉛っていう物質ってことやな。
のみエコ
のみエコ
そうですね。その2つの物質が土壌汚染対策法の特定有害物質に該当します。
茶ポール
茶ポール
この2つの物質が含まれていない油は、土壌汚染対策法の対象外ってことか。
のみエコ
のみエコ
そのとおりです、茶ポールさん。
茶ポール
茶ポール
で、どうするんや?ってことをここから書いていくってことやな。
のみエコ
のみエコ
そうです。できる限りわかりやすく書いていきます!

 

国内の環境デューデリジェンスにおける油汚染の考え方

 

この専門サイトでは、国内と海外における環境デューデリジェンスに関連する記事を書いているので、油汚染に関しても両方のケースの説明を書いていきます。

 

まずは国内のケースです。

読者の方も、日本国内の環境デューデリジェンスを担当されることがあると思いますので、文章をとばさずに読んでみて下さい。

 

実は、日本には油汚染対策ガイドラインというものが存在します。この油汚染対策ガイドラインは、平成18年3月に環境省が発行しているガイドラインです。

正式名称は、「油汚染対策ガイドライン - 鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題への土地所有者等による対策の考え方 - 」です。

 

このガイドラインには、こう記載されています。

 

このガイドラインは、油そのもの、油臭や油膜といった問題、あるいは土壌汚染の対策技術などに関する知識や技術情報に日ごろ触れることがない多くの事業者の皆さんに、油漏れなどで油を含む土ができ、その場所が油臭いとか敷地内の井戸水に油膜があるとかいうときに、どのように考え、どのような調査や対策を行えばよいかを検討する際に参考となるものとすることを意図して作りました。

 

このガイドラインに何らかの基準値や規制値のようなものが決められているわけではありません。

油臭とか油膜とかは感覚的に分かるものであり、人の感覚は土壌に含まれている油の状況の多様性にかかわらず油臭や油膜を総体としてとらえることができますから、このガイドラインでは人が感じるかどうかに基本を置いています。

  

このガイドラインには、油汚染問題に対応する際の考え方や、油汚染問題が生じている現場で調査や対策を行う際に参考となる事項を取りまとめています。また、技術的な参考資料として、現時点で得られている様々な技術情報を収録していますので、調査や対策工事を実施する場面では大いに参考にして頂きたいと思います。

 

もちろん、油汚染問題の定義も記載されています。。

 

本ガイドラインが対象とする「油汚染問題」は、「鉱油類を含む土壌(以下「油含有土壌」という。)に起因して、その土壌が存在する土地(その土地にある井戸の水や、池・水路等の水を含む。以下同じ。)において、その土地又はその周辺の土地を使用している又は使用しようとする者に油臭や油膜による生活環境保全上の支障を生じさせていること」をいう。

 

どうですか?この油汚染のガイドライン。

もし、国内の環境デューデリジェンスにおいて油汚染問題が発覚したとしても、環境省の油汚染対策ガイドラインを参考にすることができるということです。

そして、この油汚染土壌のガイドラインですが、内容が充実しています。

是非、1度は目を通されることを推奨します。

 

ここからの記事でも、油汚染対策ガイドラインを中心に書いていきますが、もちろん、私の長年の経験から得た知識も書いていきます。

 

油の種類を少し整理しておきましょう。

 

ベンゼンや鉛が含まれていない油、含まれている油と私は表現していますが、油には種類があります。

例えば、ガソリン、灯油、軽油、潤滑油、重油などです。

 

読者の方は、それぞれの油の特徴をご存知ですか?

私は知りません(笑)。

重油は、なんとなくドロドロした油というイメージですが….。

私は見た目や特徴といった観点で油の種類を見分けることができません。

 

そうなんです。

油を目視しただけでは、種類の判断ができないものです。

しかし、私の長い経験の中では知り合いの環境コンサルタント会社に、臭いで油の種類が大体わかるという方もいました。

まさに経験がなせる業だと思います。ただ、その方は例外としてこの記事では取り扱います(笑)。

 

では、どのように油の種類を判断するのでしょうか?

 

実はガスクロマトグラフという分析機器を使用して、油を分析すれば炭素の数量の違いで油の種類を判断することができます。

 

ガソリンや灯油や軽油は、炭素数が少ない分類になります。

一方、重油や潤滑油、アスファルトは炭素数が多い分類になります。

 

油汚染対策ガイドラインから抜粋する形で図に整理してみました。

 

 

ガスクロマトグラフという分析機器では、ガスクロマトグラム(チャート図)を分析結果として確認することができます。

そのチャートの形などでおおまかに油の種類を判断することができるということです。

 

ガソリン、軽油、A重油、モータオイル、ココナッツ油のチャート図は以下のとおりです。

各々の油の種類でチャートの形状が異なることが、イメージとして理解できます。

 

 

 

 

 

 

細かな分析方法やガスクロマトグラムの見方は、環境コンサルタント会社に聞いてみるのが良いです。

私も知識を増やす為に、環境コンサルタント会社にたくさん質問をして、教えて頂いた経験があります。

 

茶ポール
茶ポール
納得やで。分析することで、油の種類がわかるってことやな。
のみエコ
のみエコ
茶ポールさん、そのとおりです。例え、何か得体の知れない油が土に混じっていたとしても、分析することで油の種類を判定することができるということです。
茶ポール
茶ポール
なるほど。分析して、ガソリンに類似するチャートの形状やったら、ベンゼンさんのことを考慮しなあかんってことやな。
のみエコ
のみエコ
そのとおりです!!ベンゼンさんが怪しいってことは、土壌汚染対策法で対応できるということです。
茶ポール
茶ポール
なるほど。なるほど。

 

国内の環境デューデリジェンスにおける油汚染の調査方法(試料採取)

 

国内の油汚染(ベンゼンや鉛が含まれない)の調査は、油汚染対策ガイドラインを参考に調査することが望ましいです。

 

どのような調査をするのか?

基本的には、通常の土壌汚染の調査と変わりません。

土壌の検体を採取して、分析するということになります。

 

ただ、土壌を採取する深度は、土壌汚染対策法の調査深度と異なります。

特に地表面から15cmでの試料採取や地下水面付近での試料採取が、油の特性を考慮された上で設定されています。

 

油汚染対策ガイドラインの抜粋になりますが、図で整理してみました。

 

 

地表面から15cmでの土壌試料採取は、油が土壌に含有しやすい(粘着する)という特性から、設定されていると私は考えています。

また、地下水面付近での土壌試料採取に関しては、油が水に溶けにくい、又は軽いという特性が考慮されているからだと考えています。

 

どういうこと?なんで油が水より比重が軽いと地下水面の付近で土壌採取するの?とお考えの読者の方もいると思います。

 

少し図で整理してみました。

 

 

また、油が水に溶けにくいので、油相(フリーフェーズ)として地下水面に分布することになります。

 

この油相のイメージも図にしてみました。

 

 

どうでしょうか?イメージが伝わっているでしょうか?

読者の方の理解が深まれば幸いです。

 

ここまでは、油による土壌汚染に関する内容を書いてきましたが、油による地下水汚染の調査はどうするの?という疑問が生まれてきませんか?

 

油汚染対策ガイドラインでは、油による地下水汚染調査に関して、以下のような記載があります。

 井戸内の地下水面付近から、採水器又は水中ポンプのいずれかを用いて直接井戸水を採取する。

井戸内の地下水面付近から採水するのは、地下水面の上の油膜や油相(フリーフェーズ)も含めて採水するためである。

池・水路等の水(地表水)は、各種の採水器等を使用し、水面付近より採水する。

  

土壌汚染対策法に基づく地下水調査を経験された読者の方がいれば、異なる点に気がつきますよね?

 

土壌汚染対策法に基づく地下水調査の採取方法は、以下のように土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)に記載されています。

 

地下水の採取の深度は、最初の帯水層を対象とし、スクリーン区間の中間深度で採水を行う。

 

ここで気になるのが、井戸内の地下水面付近からという表現です。

井戸内の地下水面付近から地下水を採取するということですが、定量的な表現ではありません。

私の経験上、環境コンサルタント会社は地下水面付近から50cm下で地下水を採取していました。

また、油相(フリーフェーズ)が存在する場合は、油相のみ採取してしまうと地下水を評価できなくなることから、油相から50cm下の地下水を採取していました。

 

読者の方にとって、実際の環境デューデリジェンス業務において地下水に関する油汚染の懸念が生じた場合に、環境コンサルタント会社との協議の参考情報になれば幸いです。

 

国内の環境デューデリジェンスにおける油汚染の評価方法

 

油汚染対策ガイドラインでは、油汚染であるか否かの確認方法が以下のように記載されています。

 

油汚染問題であるか否かの確認と油汚染問題の程度の把握

様々な状態の油が生じさせている油汚染問題を総体としてとらえられるようにするためには人間の感覚によらざるをえない。

 

 このため、油含有土壌に起因する油臭や油膜の把握は、嗅覚や視覚といった人の感覚をおおもととするとともに、それらを補完し関係者の共通の理解を得るための手段としてTPH濃度を用いることとする。

 

 状況把握調査においては、(ア)油汚染問題の原因が鉱油類かどうかの確認、(イ)油含有土壌の存在範囲の把握という二つの場面でTPH濃度を使用することを想定している。

 

技術資料に示すように、TPHの試験法としては様々な方法があり、それぞれに特徴がある。③(ア)については、鉱油類のうち、油臭や油膜の発生に関係するガソリン相当分から重油相当分までをほぼカバーできる範囲を対象として、GC-FID法によるTPH試験で得られるクロマトグラムの形状、及びTPH画分毎の濃度組成による推定で行うとよい。

 

③(イ)については、(ア)の確認を通じて得られた鉱油類の情報や調査地において使用した鉱油類に関する情報を参考としつつ、現場の状況に適したTPH試験法を選択して用いるとよい。

 

どの試験法を用いてTPH濃度を得たかについては、その後の状況把握調査結果の整理、解析に不可欠であり、また対策段階で追加的な対策調査を行う場合にも必要な情報であるので、記録して保存する。

 

 

土地利用の目的や方法に応じた対応

油臭や油膜は人の感覚で捉えられるものであるから、油汚染問題がある土地の土壌とその土地を使用する人との位置関係や、土地の使用方法によって、地表面での油臭や油膜が問題となる程度が異なってくる。

 

例えば、裸地で使用することを前提とし、子供が土で遊ぶことを想定しなければならない児童公園等では、地表に寝転んでも油臭がしないような状態を達成し、それを長期的に維持管理することが対策目標として設定されることが考えられる。

 

また、公園等のように公の管理がなされているわけではなく、追加的な対策が必要となっても対応が難しい戸建て住宅の用地として、油汚染問題がある土地を売却することを予定している場合には、売却後に掘削などの形質変更が行われても油臭や油膜が問題とならないように、油含有土壌を掘削して除去したり浄化したりすることが対策目標として設定されることが考えられる。

 

一方で、都心部の事務所や駐車場用地のように、ビルを建てたり、コンクリートで覆って用いる土地の利用方法であれば、油含有土壌があっても土地を使用する人が油臭や油膜を感じないという場合もある。

 

このように、同じ状態の油が同程度含まれている土壌であっても、土地の利用方法によって油臭や油膜がどの程度問題になるかどうかは異なる。

 

このため、土地利用の目的や方法によって対策方法を適切に選定することが必要となる。

 

井戸水等の油臭や油膜

調査地のある敷地内の井戸水や、修景用の池の水や、敷地内の水路を流れる水に油臭や油膜があることは油汚染問題発見の契機であり、対策の目標として、それらの井戸水等の油臭や油膜を除去することや、可能であれば井戸等を廃止することが検討されることが想定される。

 

 また、鉱油類が地下水によって周辺に拡散しないようにすることが対策の目標になることも考えられる。

 

一方、地下水があってもそれが井戸水等として利用されていない土地のモニタリング用井戸で油臭や油膜が発見された場合には、地表の油臭や油膜などの他の油汚染問題が生じたり、地下水中の鉱油類が公共用水域を汚染するおそれがあるような場合は別として、特別の対策を講じる必要がないことが想定される。

 

地表や井戸水等には油汚染問題がなかったのに、新たな土地利用を行うために建物の基礎工事を行っている際に油臭や油膜が発見されることがある。このようなときは、次の工事工程で、例えばコンクリート床版が施工されたり掘削された場所が埋戻されることにより、油臭が遮断され油膜も遮蔽されるならば、敷地内で井戸水等の使用がなく、周辺に影響を及ぼすおそれも考えられない場合には、別途特別の対策を講ずる必要がないことになる。

 

つまり、油汚染が鉱油類であるということが前提で、油汚染に関する土壌の評価は、油臭、油膜があるか無いか。

そして、Total Petroleum Hydrocarbon(TPH:全石油系炭化水素)の分析結果による濃度ということです。

 

油汚染に関する地下水の評価は、油臭、油膜があるかどうかということです。

 

土壌の油臭に関しては、一定条件下で油臭を感じるか否かがポイントになってきます。

イメージを図に整理してみました。

 

 

たしかに、公園と一般的に大人が利用する場所では、油臭を感じる地面からの高さはことなりますよね。

 

次に土壌の油膜に関して、油膜がある例を図にしてみました。

 

 

これだけ虹色の油膜が確認できれば、油膜ありということになります。

 

油汚染対策ガイドラインに記載されているとおり、油臭と油膜の判断には個人差があります。

したがって、油汚染対策ガイドラインには、油臭及び油膜の測定方法が記載されています。

 

土壌の油臭の測定方法

土壌 50g を 500ml 容ガラス瓶に入れ、蓋をして約 25℃で 30 分間放置した後、蓋を外して直ちに土壌から発生する臭いを嗅ぎ、臭気の有無及び油種とその程度を試験する。

なお、土壌の質量及びガラス瓶の容積については、調査地として統一するのであれば変更してもよい。

ただし、その場合には、土壌の質量及びガラス瓶の容量をどう選択するかによって測定結果として得られる油臭の程度が変わってくることに留意して測定結果を評価することが必要である。

また、この測定方法で得られた結果は、評価対象とする現地での油臭の有無を試験する場合に比べ、密閉された空間に臭気成分が閉じ込められた状態になるため、油臭の程度は高い傾向を示すことに留意する必要がある。

 

地下水等を含む水の油臭の測定方法

試料水 100ml を共栓三角フラスコ 300ml に入れ、蓋をして約 25℃で 30 分間放置した後、フラスコを揺すり動かしながら栓をとり、直ちに臭気の有無及び油種とその程度を試験する。

なお、試料水の体積及び共栓三角フラスコの容積については、調査地として統一するのであれば変更してもよい。

ただし、その場合には、試料水の体積及び共栓三角フラスコの容積をどう選択するかによって測定結果として得られる油臭の程度が変わってくることに留意して測定結果を評価することが必要である。

 

 

油汚染の油臭の程度の表示例

 

 

上記の表が作業上での土壌及び地下水等の水の油臭ありなしの目安になります。

 

 

 

油膜の測定法は以下のとおりです。

ビーカー法とシャーレ法が油汚染対策のガイドラインに記載されていますが、この記事では私の経験上、一般的なシャーレ法を説明していきます。

 

土壌の油膜の測定方法

シャーレ(直径 94mm、高さ 20mm)に蒸留水を 50ml 入れ、シャーレの下に黒い紙を敷く。蒸留水の中に薬さじ 1 杯分(約5g-wet)の土壌を静かに入れ、直後の液面を目視で観察する。

 

 

油汚染の油膜の発生状況

 

 

地下水等を含む水の油膜の測定方法

シャーレ(直径 94mm、高さ 20mm)に水を静かに 50ml 量り入れ、シャーレの下に黒い紙を敷く。明るい場所で液面を目視で観察する。

 

 

油汚染の油膜の判定

 

 

最終的にはどのように油臭及び油膜を判断するのかは、環境コンサルタント会社と協議することを推奨します。

私の経験では、環境コンサルタント会社は分析会社に油臭及び油膜の判定を依頼していました。

 

さて、最後にTPHの濃度に関して書いていきます。

TPHの濃度に関しては、油汚染対策ガイドラインで以下のように記載されています。

 

鉱油類には種々の種類があり、油汚染問題を生じさせている油の状態も様々であり、油の濃度が同じでも油臭や油膜の状況が異なるため、油含有土壌に起因する油臭や油膜の把握は、嗅覚や視覚といった人の感覚によることを基本とし、それらを補完するものとして、関係者の共通の理解を得るための手段としてTPH濃度を用いる。

 

つまり、TPHの濃度は補完データということです。ただ、一方で定量的に油汚染を把握できることから、評価という観点では欠かせない項目です。

 

油汚染対策ガイドラインでは「対策検討範囲設定濃度」として以下の記載があります。

 

「対策検討範囲設定濃度」は、「地表の油臭や油膜が感覚的に認められなかった場所で測った土壌TPH濃度のうち最も高い濃度」である。ただし、地表の油臭を感じるかどうかは気象条件によって異なりがちなので、油臭がないと思った場所で測った土壌TPH濃度(「無臭TPH」という。)の最大値が、油臭があると思った場所で測った土壌TPH濃度(「有臭TPH」という。)の最小値よりも大きいという結果となることもある。

 

なかなか、難しい文章ですよね。私は、なかなか理解することができませんでした(笑)。

ただ、知り合いの環境コンサルタント会社はTPH濃度 1,000mg/kgを1つの評価の目安にしています。

理由を聞いたことがあるのですが、ガソリンスタンドなどにおける土壌汚染調査において石油産業業界が参照としている濃度数値ということでした。

 

私も多くの油汚染に関する報告書を拝見したことがありますが、TPH濃度の判断基準で900~1,000mg/kgが多かったのを記憶しています。

このTPH濃度の1,000mg/kgという数値も読者の方が、実際の環境デューデリジェンス業務においてTPHの分析を環境コンサルタント会社との協議する際の参考情報になれば幸いです。

 

 

 

あなた、この記事を読んでみて油汚染に関してどのようなイメージをお持ちになりましたか?

 

油汚染は厄介です。

なぜ、厄介なのか?

それは、人が目視で、又は嗅覚で油汚染を認識できるからです。

 

つまり、環境デューデリジェンスにおいて油汚染が特定された場合、その度合いに限らず心理的嫌悪感が生まれ、気になるということです。

 

何かの懸念事項が気になるということは、環境デューデリジェンスで比較的対応をすべき事項になります。

そして、その油汚染には該当する法律がないケースがあります。

 

なので、油汚染が特定された場合は、慎重に環境コンサルタント会社と協議をし、どのように対応していくのかを検討しなければなりません。

 

今回の記事では、国内の油汚染に関する環境デューデリジェンスについて書いてみましたが、次の記事では、海外のM&A環境デューデリジェンスにおける油汚染について書いてみようと考えています。

 

最後までこの記事を読んで頂きありがとうございました。