平成31年 改正土壌汚染対策法

埋立地管理区域内において認められる土地の形質の変更の施行方法の基準(Appendix-13)の解読

土壌汚染対策法のガイドライン改訂第3版の埋立地管理区域内において認められる土地の形質の変更の施行方法の基準

 

土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン 改訂第3版のAppendixは参考資料として付属されており、Appendix No.1からAppendix No.25まであります。

 

土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドラインの本文を読んで、土壌汚染問題に関する調査などの知識を得るということは必須であり、環境デューデリジェンスの知識や技術の向上にも必要なことです。

 

一方で私の経験上、土壌汚染問題や土壌汚染調査の本質的な事項は意外にも付属しているAppendixに多く記載されていると考えています。

つまり、土壌汚染問題を理解する為の基礎情報や補足情報が記載されているということです。

 

なぜ、土壌汚染問題に関する基礎情報や補足情報が環境デューデリジェンスに必要かということですが、環境デューデリジェンスの結果はM&A取引を行う企業間同士で共有されます。

そして、環境DDの結果に関して議論されるわけです。

 

議論の際に当然、環境面や土壌汚染問題の知識がない担当者の方や経営層がいる可能性はあります。

そのようなケースでは、基礎情報や補足情報を丁寧に説明するということが非常に効果的であり、重要なのです。あくまでも私の経験の話ですが…(笑)。

 

更に環境省の土壌汚染調査管理技術者試験でも、Appendixに記載されている内容が問題として出題されいます。

実際、土壌汚染調査管理技術者試験の問題を解いていると、結構の頻度でAppendixを参照しています。

 

そこで、環境デューデリジェンスの知識や技術の向上を考慮して、Appendixに記載されている内容を学んでみることにしました。

 

私は海外M&Aの環境デューデリジェンスを多数経験していますが、やはり国内の環境デューデリジェンスに適用されることが多い土壌汚染対策法のルールを知っておくことは重要だと考えています。

土壌汚染対策法では○○で、海外の法規制では○○ですという例え話は、とても説得力がありますし、理解しやすいですからね。

 

今回は、Appendix No.13の埋立地管理区域内において認められる土地の形質の変更の施行方法の基準についてです。

 

私なりの解釈や概要を整理していきます。

 

 

 

埋立地管理区域内において認められる土地の形質の変更の施行方法の基準

 

埋立地管理区域とは?という視点から記事を書いていきます。

 

土壌汚染対策法施行規則第53条第1号ロの環境大臣が定める同令第58条第5項第12号に該当する区域とは以下のとおりです。

 

埋立地管理区域(形質変更時要届出区域であって、当該形質変更時要届出区域内の土地が公有水面埋立法による埋立て又は干拓の事業により造成が開始された土地として次の要件のいずれかに該当すると認められるものをいう。)にあっては、その旨

 

イ  工業専用地域内にある土地

 

ロ  イに掲げる土地以外の土地であって当該土地又はその周辺の土地にある地下水の利用状況その他の状況が工業専用地域内にある土地と同等以上に将来にわたり第三十条の要件に該当しないと認められるもの

 

 

なかなか難しい表現です。

もう少し言葉を付け足して整理すると以下の通りです。

 

 

形質変更時要届出区域内の土地が公有水面埋立法による埋立て又は干拓の事業により造成が開始された土地であって、①又は②の要件に該当すると認められるもの

 

① 都市計画法(昭和 43 年法律第 100 号)第8条第1項第1号に規定する工業専用地域内にある土地であること。

 

② ①に掲げる土地以外の土地であって当該土地又はその周辺の土地にある地下水の利用状況その他の状況が工業専用地域内にある土地と同等以上に将来にわたり地下水の利用状況等に係る要件(規則第 30条各号)に該当しないと認められるもの。

 

 

まず、大きく分類すると形質変更時要届出区域であるということです。

 

 

 

埋立地管理区域内における土地の形質の変更の施行方法:最も浅い帯水層の中で土地の形質の変更を行う場合

 

土壌汚染対策法施行規則第53条第1号ロの環境大臣が定める同令第58条第5項第12号に該当する区域(埋立地管理区域)内の帯水層に接する土地の形質の変更の施行方法の基準は、次の各号のいずれにも該当することです。

 

1. 地下水位を管理して施行する方法

 

地下水位を関して施行する方法は以下の通りです。

 

(1) 当該土地の形質の変更の範囲の土地の土壌の特定有害物質による汚染に起因する地下水の汚染の拡大を的確に防止できると認められる地点に揚水施設を設置し、地下水を揚水すること。

 

(2) 上記(1)により揚水した地下水に含まれる特定有害物質を除去し、当該地下水の水質を排出水基準に適合させて公共用水域に排出するか、又は当該地下水の水質を排除基準に適合させて下水道に排除すること。

 

(3) 当該土地の形質の変更の範囲の土地の地下水の汚染が拡大するおそれがあると認められる当該土地の形質の変更の範囲の周縁の土地に観測井を設け、定期的に地下水位を観測し、当該土地の形質の変更が終了するまでの間、当該周縁の土地の地下水位を確認すること。

 

(4) 上記(3)の観測の結果、当該土地の形質の変更の範囲の土地の地下水位が当該周縁の土地の地下水位を超えていると認められる場合には、当該土地の形質の変更の範囲の土地の地下水の汚染の拡大を防止するための措置を講ずること。

 

 

 

2. 地下水の水質を監視して施行する方法

 

地下水の水質を監視して施行する方法は以下のとおりです。

 

(1) 当該土地の形質の変更の範囲の土地の地下水の汚染が拡大するおそれがあると認められる当該土地の形質の変更の範囲の周縁の土地に観測井を設け、1ヶ月に1回以上定期的に地下水を採取し、当該土地の形質の変更が終了するまでの間、当該地下水に含まれる特定有害物質の量を規則第6条第2項第2号の環境大臣が定める方法により測定すること。

 

規則第6条第2項第2号の環境大臣が定める方法は以下の記事を参照下さい。

 

土壌汚染対策法 地下水に含まれる試料採取等対象物質の量の測定方法
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地下水に含まれる試料採取等対象物質の量の測定方法(Appendix-6)の解読

 

 

(2) 上記(1)の測定の結果、地下水の汚染が当該土地の形質の変更の範囲の土地の区域外に拡大していると認められる場合には、当該土地の形質の変更の範囲の土地の地下水の汚染の拡大を防止するための措置を講ずること。

 

 

 

埋立地管理区域内における土地の形質の変更の施行方法:最も浅い位置にある準不透水層より深い位置にある帯水層まで土地の形質の変更を行う場合

 

最も浅い位置にある準不透水層(厚さが1m以上であり、かつ、透水係数が毎秒1μm(1.0×10-6 m/秒)以下である地層又はこれと同等以上の遮水の効力を有する地層をいう。)より深い位置にある帯水層まで土地の形質の変更を行う場合には、次のいずれにも該当する必要があります。

 

1)  土地の形質の変更に着手する前に、当該土地の形質の変更の範囲の側面を囲み、基準不適合土壌の下にある準不透水層であって最も浅い位置にあるものの深さまで、鋼矢板その他の遮水の効力を有する構造物を設置すること。

 

2) 土地の形質の変更を行う準不透水層より浅い位置にある帯水層内の基準不適合土壌又は特定有害物質が当該準不透水層より深い位置にある帯水層に流出することを防止するために必要な措置を講ずること。

 

3) 最も浅い位置にある準不透水層より深い位置にある帯水層までの土地の形質の変更が終了した時点で、当該土地の形質の変更が行われた準不透水層が本来の遮水の効力を回復すること。

 

 

 

埋立地管理区域内における土地の形質の変更の施行方法:その他

 

埋立地管理区域内の土地の形質の変更は、汚染の拡散のリスクを伴うものであることから、その施行において、飛散等を防止するために必要な措置を講ずるのが当然です。なお、当該土地の形質の変更の実施状況について、都道府県等による報告徴収及び立入検査の規定があります。

 

 

 

埋立地管理区域内における土地の形質の変更時の工法

 

地下水位を管理して施行する方法

 

地下水位を管理して施行する方法の代表的な事例は以下に記載するとおりです。

 

【釜場揚水による揚水】および【井戸方式による揚水】です。

現場レベルでは、雨水のことも想定されるので【釜場揚水による揚水】が一般的です。

 

地下水位を管理して施行する方法

 

 

 

山留め壁を併用した揚水(釜場揚水)】および【山留め壁を併用した揚水(揚水井戸)】です。

現場レベルでは、雨水のことも想定されるので【山留め壁を併用した揚水(釜場揚水)】が一般的です。

 

地下水の水質を監視して施行する方法1

 

 

 

地下水位を管理しながら土地の形質の変更を行う場合の施行管理の方法

 

地下水位を管理しながら土地の形質の変更を行う場合の施行管理方法は以下のとおりです。

なお、土壌の掘削を伴う場合、掘削時、掘削面より上位に水面がないことを目視で確認し、その記録を工事記録として残す必要があります。

 

(1) 測定位置:土地の形質の変更を行う範囲の周縁

 

(2) 測定地点:一以上の地点

 

(3) 測定頻度:形質の変更中、定期的に測定

 

 

 

地下水の水質を監視して施行する方法

 

当該施行方法に該当する工事としては、以下のものが例として挙げられます。

 

(1) 既製杭の打設 (木杭、PC 杭、鋼管杭)(先行削孔併用工法)

 

(2) 現場打ち杭の打設 (アースドリル工法、リバース工法、ほか)

 

(3) 地中壁の造成 (地中連続壁、ソイルセメント固化壁)

 

(4) 地盤改良工事 (地耐力改良、液状化対策、止水ほか)

 

(5) ニューマチックケーソン 

→ ニューマチックケーソン工法概要(引用:大豊建設株式会社Webサイト)

 

イメージ図は以下に記載する通りです。

 

地下水の水質を監視して施行する方法2

 

 

 

地下水の水質を監視しながら土地の形質の変更を行う場合の施行管理の方法

 

地下水の水質を監視しながら土地の形質の変更を行う場合の監視方法は以下に記載するとおりです。

 

(1) 測定位置:土地の形質の変更を行う範囲の周縁

 

(2) 測定地点

①地下水流向が明らかな場合は、地下水流向下流側

②地下水流向が不明な場合は、四方位

③区域外からの汚染の流入のおそれがある場合は、地下水流向上流側及び下流側

 

(3) 地点密度:観測井(水質)の間隔は、目安として 30m以内

 

(4) 測定頻度:形質の変更前、形質の変更中(少なくとも1ヶ月ごと)

 

(5) 測定物質:区域指定を受けた特定有害物質、措置に伴い生成されるおそれがある特定有害物質

 

(6) 測定方法:平成 31 年環境省告示第 11 号

 

 

 

下位帯水層まで土地の形質の変更を行う場合

 

Appendix「12. 土壌溶出量基準に適合しない汚染状態にある要措置区域等内の帯水層に接する場合における土地の形質の変更の施行方法の基準」のうち、「3.2 下位帯水層まで土地の形質の変更を行う場合」と同等の施行方法とする必要があります。

詳細は以下の記事を参照下さい。

 

土壌溶出量基準に適合しない汚染状態にある要措置区域等内の帯水層に接する場合における土地の形質の変更の施行方法の基準(Appendix-12)
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最後に…

 

今回は、Appendix No.13埋立地管理区域内において認められる土地の形質の変更の施行方法の基準について、私なりに整理してみました。

 

学ぶべきことが沢山あったと実感しています。

私は埋立地管理区域内というわけではありませんが、同様の施行案件で【山留め壁を併用した揚水(釜場揚水)】を多く経験しています。

 

 

 

さて、私は小説を寝る前に本としてゆっくり読みたいタイプの人間ですが、勉強で読む本や参考書はスマートフォンやタブレットで通勤中にAmazon Kindleで読み込むタイプです。

以下の本を何回も参考書のように読んでいます。

 

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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