こんなことを書いてます
平成30年度 環境省 土壌汚染調査技術管理者試験の過去問の解答に挑戦 (その1)
環境デューデリジェンスを実施したり、基礎を勉強していく中で、基礎勉強の一環として取得に挑戦してもよいのでは考えている資格があります。
それが、環境省が認定している土壌汚染調査技術管理者試験です。
土壌汚染調査技術管理者試験は2010年度から試験の実施が開始された国家資格の為の試験です。
主に土壌汚染対策法に基づいた問題が出題され、試験に合格すると国内で土壌汚染対策法に基づいた調査を行うことができる指定調査機関の技術管理者になることができます。
はっきり言って環境コンサルタント会社向けの試験ですが、企業で環境DDを担当する方でも勉強することで土壌汚染問題の基本的な知識を蓄えることができます。
環境デューデリジェンスの為の土壌汚染や地下水汚染の知識を身につけながら、うまくいけば資格を取得できるというケースはいいですよね。
環境省のウェブサイトで調べてみると、受験資格は特にないようです。
ただし、試験に合格しても事前に3年間の実務経験がなかれば、資格は付与されないということでしたので、読者の方はお気をつけ下さい。
また、試験に合格してから、1年以内に資格の登録をしなければ合格が無効になってしまうそうです。
詳しくは、以下を環境省のウェブサイトを参照してください。
土壌汚染調査技術管理者試験の合格率など
土壌汚染調査技術管理者試験は難しいのか?という点ですが、平成30年度の合格率(10.6 %)を見るとかなり難しい試験だといえます。
平成30年度 土壌汚染調査技術管理者試験の合格基準は、次の(1)及び(2)を満たすことと発表されています。
(1)総合得点率 65 % 以上(52問 / 80問以上)
(2)問題区分別得点率
調査 30 % 以上
対策 30 % 以上
法令等 30 % 以上
調査、対策、法令等の一定の知識が必要になるということです。
ちなみに、平成30年の問題の数は、以下のとおりです。
調査 : 問1~問35
対策 :問1~問25
法令等:問26~問45
資格名が土壌汚染調査技術管理者試験なので、調査の問題が一番多いようです。
次に、受験申請者数、受験者数、合格者数、合格率です。
平成30年度 土壌汚染調査技術管理者試験結果
受験申請者数 : 1,327 名
受験者数 : 1,036 名
合格者数 : 110 名
合格率 : 10.6 %
合格率が約10 %の試験なので、土壌汚染問題に触れたことがある方でも、合格するとなると結構な勉強時間が必要となるのかもしれません。
しかし、ここで立ち止まる訳にはいきません。早速問題を知識習得の為に解いていこうと思います。
ただ、私の個人的な見解と知識で解いていきますので、答えが間違っていたらすいません。仮に答えが間違っていたとしても、私は責任を取りませんのでご了承下さい。
過去問題 平成30年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 1
問題 1 特定有害物質を含む地下水の流れに関する次の記述のうち、もっとも不適当なものはどれか。
⑴ ダルシーの法則は、水の流れが層流であることが前提であり、流速が著しく速い場合には適用できないものの、地盤内の水の流れにおいては、ほとんどの場合に適用できる。
⑵ 縦分散係数は、移行距離に対するスケール依存性が示されている。
⑶ 横分散係数は、縦分散係数の 10 分の 1 ~ 100 分の 1 程度になる傾向がある。
⑷ 実流速とは、地盤内の間隙中を水が流れる際の速度で、ダルシー流速よりも小さくなる。
⑸ 地下水の流れを現場で追跡する場合にトレーサーを用いる方法がある。このとき、トレーサーとして食塩等が用いられる。
この問題を初めて見た時、はっきり言ってチンプンカンプンでした。
まずは、ダルシーの法則や縦分散係数、横分散係数、実流速を調べる必要がありました。
ダルシーの法則について
地下水は層の中の土粒子の間隙を流れることになるので、層流であるということが前提であることは理解できました。
つまり、ダルシーの法則は、乱流では成立しないということになります。
また、流速が著しく速い場合というのも直感的にダメということが理解できます。
縦分散係数と横分散係数について
この分散係数に関しては、調べてもチンプンカンプンでした。
でも、三重県の汚染拡散シュミレーションに関する参考資料に横分散係数は、縦分散係数の 10分の1が一般的と書いてありました。
実流速について
ダルシー流速は、流量を通過断面と時間で割ることで計算されるので、慣例的な流速になります。
その、ダルシー流速を間隙率(土粒子断面における間隙の割合)で割った値が実流速として計算できます。
つまり、実流速はダルシー流速より大きくなるということです。
トレーサーについては、食塩や特殊な色が付いた液体が使用されるということを昔、来たことがあるので、すぐに正しいだろうと判断できました。
つまり、もっとも不適当だと考えられるのは「④」ということになりました。
間違っている箇所が確認できて良かったです。縦分散係数に関しては、サッパリだったので(笑)。
過去問題 平成30年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 2
問題 2 土壌環境中における法の特定有害物質の移動性に関する次の記述のうち、もっとも不適当なものはどれか。
⑴ テトラクロロエチレンは密度が水より大きい水溶性液体で、高濃度のまま帯水層底部に停滞していることがある。
⑵ 地表で漏洩したベンゼンを含む鉱油は地中を下方に移動し、地下水面付近に達すると地下水表面を水平方向に広がる。
⑶ 鉛が地下水に溶け込み、硫酸イオンと反応すると不溶性の沈殿を生成するため移動性が低くなる。
⑷ 硫化水銀は不溶性で移動しにくく、金属水銀は汚染土壌の掘削時に水銀蒸気を発生するおそれがある。
⑸ ポリ塩化ビフェニル(PCB)は化学的に安定で環境中では分解されにくいため長期間土壌中に残留する。
この問題を見た時に、②と⑤は正しいことが書いてあるとなんとなく思いました。
なので、まずテトラクロロエチレンについて調べてみました。
テトラクロロエチレンの密度は、1.62 g/cm3で、水の密度は997 kg/m3でした。
1.62 g/cm3をkg/m3に変換すると、1,620 kg/m3でした。
テトラクロロエチレンは、Denes Non-aqueous Phase Liquid : DNAPLに該当するそうです。Non-aqueous Phase Liquidは非水溶性体という意味だそうです。
もっとも不適当だと考えられるのは「①」ということになりますね。
ただ、鉛と硫酸イオンの関係、硫酸水銀に関して自分の中で明確な答えを知っておきたかったので、調べてみました。
硫酸イオンを加えると沈殿するものに鉛イオンが該当するという記載を化学の先生のウェブサイトで確認しました。
硫酸水銀の溶解度の記載で、水には不溶と記載されていることを確認しました。
過去問題 平成30年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 3
問題 3 ある一定環境下において、初期濃度 0.28 mg/L であったトリクロロエチレンが自然分解を受けて 8 年後に 0.14 mg/L に低下した。さらに 4 年後(計 12 年経過後)におけるトリクロロエチレン濃度の予測値として次に掲げるもののうち、もっとも近いものはどれか。なお、この分解は一次反応に従うものとし、トリクロロエチレン以外の物質の影響はないものとする。
⑴ 0.070 mg/L
⑵ 0.099 mg/L
⑶ 0.11 mg/L
⑷ 0.20 mg/L
⑸ 0.21 mg/L
私が苦手とする計算問題ですね…。
初期濃度が0.28 mg/Lで、8年後に0.14 mg/Lなので濃度が半分になっていますね。
つまり、0.14 mg/Lから濃度が高くなるということは、この問題の趣旨では考えられないので、④と⑤は違いますね。
そして、比で単純計算して①も違うということが理解できます。つまり、②か③ということになります。
私なりに考えてみました。
初期濃度が0.28 mg/Lで、8年後に0.14 mg/Lなっているので、濃度が8年間で0.07 mg/L 自然減衰したことになります。
単純に仮定してみると、4年間で0.035 mg/Lの自然減衰があると考えられます。
12年後(8年後から更に4年後)の予測値を知りたいので、0.14 mg/Lから0.035 mg/Lを引いてみました。
私の予測値は、0.105 mg/Lとなりました。
なるほど、③の0.11 mg/Lが答えがと一度は思ったのですが、0.105という数字に違和感を覚え、土壌汚染対策法の有効数字の考え方を調べてみました。
すると、土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)のAppendix 15-1に以下の記載がありました。
地下水に含まれる調査対象物質の量の測定方法(環境省告示第 17 号 平成 15 年3月6日) についての補足
・定量下限値及び結果の取り扱いについて
地下水の水質分析では、定量下限値を地下水基準の 1/10を目安とし、報告値は有効数字を2桁として3桁目以降を切り捨てて表示する。
つまり、0.105 mg/Lの「5」は切り捨てるということになります。
したがって、0.10 mg/Lが私の考えた予測値になりました。
この問題の回答でもっとも近い濃度は、「②の0.099 mg/L」ということになります。
過去問題 平成30年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 4
問題 4 重金属等に関する次の記述のうち、もっとも不適当なものはどれか。
⑴ 砒素は、黄鉄鉱の酸化により溶出する場合がある。
⑵ ふっ素は、花崗岩が起源となっている場合がある。
⑶ 亜砒酸( 3 価の砒ひ素)と砒酸( 5 価の砒素)では、一般に砒酸の方が毒性が強い。
⑷ ほう素化合物は、水への溶解性が高いためほかの物質と結合させて不溶化することが比較的困難である。
⑸ 鉛は、同位体比を測定することで人為由来か自然由来かを判断できる場合がある。
そもそも、黄鉄鉱(おうてっこう)とは何だからが、私の疑問です。
調べてみると鉄と硫黄からなる硫化鉱物の一種だそうです。
さらに検索結果でヒットしたいくつかの論文を抜粋して読んでみると、黄鉄鉱の酸化溶解における砒素の溶出機構が考えられているという記載をみました。
花崗岩とふっ素の関係は、「地下水のフッ素汚染源と推定される鉱石の分析」という論文をチラっと読んで、以下の記載を確認しました。
「汚染地区近くの採石場で花崗岩等を採取したところ,高濃度のフッ素を溶出する石が見つかった.」
砒素に関しては、愛知県衛生研究所のWebサイトから以下の記載を確認しました。
「一般的にその毒性は、無機ヒ素(3価)>無機ヒ素(5価)>有機ヒ素となります。」
もっとも不適当な回答は「③」ですね。
④と⑤はなんとなくですが、昔に聞いたことがあったので、正しいのではないかと考えました。
過去問題 平成30年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 5
問題 5 地下水汚染調査に関する次のA~Eの記述のうち、不適当なものの組み合わせはどれか。
A 汚染が確認された帯水層の地質が礫質土主体の場合、重金属等による汚染であっても到達距離が 1,000 m を超える場合がある。
B 不圧地下水が河川等の水面と連続している場合には、もっとも浅い帯水層の地下水汚染の到達距離は河川等を越えることはないと判断してよい。
C 不圧地下水の流れは、地形、水文地質構造、地下水の涵かん養よう条件と流出条件等の諸条件によって決まる。
D 一般的に、鉛・総水銀・全シアンは、砒ひ素・ほう素・ふっ素より地下水汚染の到達距離が長い傾向にある。
E 単一のボーリング孔で行う孔内流向流速測定は、精度がよいことから、一斉測水調査よりも広域的な地下水の流動方向を把握することに適している。
⑴ A、B
⑵ A、D
⑶ C、D
⑷ C、E
⑸ D、E
Aの記述に関しては、重金属等の汚染が1,000mを超える場合があると私は考えています。
土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)には、各々の物質毎の「地下水汚染が到達し得る一定の距離の目安」が記載されていましたが、あくまでも目安ということでした。
Bの記述は、直感的に正しいと思いました。
河川の流れに沿って汚染は拡散していくと考えられますが、河川を越えて地下水汚染が広がることはないと考えています。
Cの記述も直感的に正しいと思いました。
Dの記述は、先ほどの「地下水汚染が到達し得る一定の距離の目安」を確認しました。
鉛、水銀、シアンは概ね80 mで、砒素、ふっ素、ほう素が概ね250 mでした。
つまり、「D」は不適当な記述の1つですね。
Eの条件は、かなり現場よりの内容なのでチンプンカンプンでしたが、何回も読み直してみると一箇所の測定結果より、いくつかの箇所での測定結果が地下水の流動方向を把握するのに適していると記載されています。
これは、測定箇所が多いほうが良いという判断をしました。
「E」は不適当な記述の1つですね。
つまり、DとEが不当な記述なので、解答は(5)になります。
なんとか、問題5まで回答することができました。
もし、あなたが土壌汚染調査技術管理者試験の対策の為にこの記事を読んでいるのであれば、ズバリ!まだ、間に合います!
焦らずに、一問一問を読んで理解してみてください!頑張ってください!
この土壌汚染調査技術管理者試験には、多くの参考書が販売されています。
もし、読者の方が購入されるなら自分に合った参考書をちゃんと選んでください。
私は、土壌汚染問題の基礎が分かる本を買いました。
あと、既に上述していますが、私の個人的な見解と知識で解いていきますので、答えや答えを導く過程が間違っていたらすいません。
仮に間違っていたとしても、私は責任を取りませんのでご了承下さい(笑)。
頑張ってひとつひとつ、ダブルチェック的な観点で調べてみてください。
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最後まで一緒に問題の回答を考えて頂き有難う御座いました。