知っておくべきM&Aの用語

M&Aにおけるcross border(クロスボーダー)の意味

M&Aにおけるcross border(クロスボーダー)の意味

 

Cross-border(クロスボーダー)は英語で国境を越えた、国境をまたぐ、越境などの意味します。

 

私の経験上、M&A案件の中では「クロスボーダーM&A案件」「○○弁護士事務所にてクロスボーダー案件に従事」などの文言としてよく目にします。

クロスボーダーとは国境をまたぐM&A案件ということなので、海外の土地や施設又は海外企業が絡むM&A案件ということになります。

 

 

クロスボーダー案件に挑戦する日本企業は増加の傾向にあります。

理由としては、企業のグローバル化や生産性の向上(海外マーケットの開拓)、日本になり技術の取得、企業の海外進出などが考えられます。

 

しかし、一方でクロスボーダーM&A案件の難易度は高いのが現状です。

例えば、以下の課題が難易度を高くしています。

 

🔹国内市場に比べ情報の非対称性が大きく、ターゲットとしている事業・企業の状況や見通し、リスクについての情報・知見が十分取得できない。

 

🔹同様の理由から、トレンドの分析・予測の難度が高く、対象企業の株価等に対する適切な評価・判断が難しい。

 

🔹事業に係る規制・税制・法制度(司法インフラも含む)等、制度面の違いにより思わぬ障壁が生じる可能性がある。

 

🔹言語・文化の違いや物理的距離・時差の存在により、対象企業と適切なコミュニケーションを取れず、思わぬトラブルやリスクが顕在化する可能性がある。

 

詳細は平成30年3月に経済産業省の「我が国企業による海外M&A研究会」が公表した「我が国企業による海外M&A研究会」報告書に関するレビュー記事(1)~(3)を参照ください。

 

我が国企業による海外M&A研究会」報告書
経済産業省が公表した「我が国企業による海外M&A研究会」報告書をレビュー その1平成30年3月に経済産業省が公表した「我が国企業による海外M&A研究会」報告書をレビューした結果 その1 平成30年3...

 

クロスボーダーM&A案件の種類

 

よくM&A案件に関する資料でIn-out(インアウト)Out-in(アウトイン)などの単語を見ることがあると思いますが、以下のとおりです。

 

In-outは日本企業が海外企業に対してM&Aを実施することです。

 

Out-inは海外企業が日本企業に対してM&Aを実施することです。

 

これらのIn-outとOut-inの案件は、海外企業か関係することからCross-border(クロスボーダー)M&A案件と言えます。

 

ちなみにIn-in(インイン)という単語もあります。

In-inは日本企業が日本企業に対してM&Aを実施することです。国内M&A案件ということです。

 

近年では、In-out型のクロスボーダーM&A案件が増加している印象を受けます。

つまり、日本企業が海外企業に対してM&Aを実施しているということです。

 

日本企業が関係するクロスボーダーM&A案件数の推移

 

日本企業の海外M&Aは上達しているのか?海外M&A実態調査にみる日本企業の課題と成功のポイント(日本企業の海外M&Aに関する意識・実態調査結果)では、以下の記載を確認しました。

 

日本企業による海外企業の買収(In-Out)は、海外企業による対日投資(Out-In)や日本国内におけるM&A(In-In)と比較しても規模が大きく、直近5年間は継続して増加している。

 

国内市場の停滞・縮小を受けた海外進出・事業拡大に加え、日本企業が蓄積している豊富な内部資金の活用方法としても、海外M&Aの重要な成長手段としての認識が高まっている。

 

現状もそうですが、これからもクロスボーダーM&A案件は、主流ということになりそうです。

 

クロスボーダーM&A案件における外部専門DDチームの選定

 

企業が海外M&A案件を実施することを検討して、外部専門DDチームに業務の一部を委託する場合は、クロスボーダーM&A案件の経験を有する外部専門DDチームを選定することが望ましいです。

海外では、関係する法規制や文化が異なるからです。これは、Out-in(アウトイン)のM&A案件でも言えることです。

 

海外企業の現地習慣を熟知しているクロスボーダーM&A案件の経験を有する外部専門DDチームは、彼らの経験を生かして日本のM&A文化と海外のM&A文化やアプローチの仕方を考慮して、円滑にDDを進めることができると思います。

しかし、その一方で日本企業の考え方のベースは、やはり日本の法規制であったり、日本式のDDの建付けです。

したがって、日本のM&A案件を経験し、日本人の観点からクロスボーダーM&A案件をアドバイスできる外部専門DDチームが最適なのかもしれません。

 

クロスボーダーM&A案件では対象国の法制度やルール、現地習慣等に対応する必要があるため、現地アドバイザーの利用が必要となることが多いです。

その際は、日本オフィスのアドバイザーが現地アドバイザーを統括する役割を担い、案件に関与することが有効です。

 

例えば、法務においては日本の法律事務所が、取締役の善管注意義務の観点や日本と現地との法制度の違い等を踏まえた司令塔としての役割を果たすことができるからです。

現地アドバイザーと直接契約し、不要なサービスに対する費用を請求されたり、日本法との違いや税務面の影響を十分に把握しないままディールを実行することで、後々思わぬリスクが顕在化したりする恐れがあるので、現地アドバイザーとうまく連携して案件を進めるために、グローバルでサービ展開している外部専門DDアドバイザーを活用することが有効な選択肢の一つです。

 

最後に…

 

私は環境デューデリジェンスの担当なので、全てを完璧に説明できるわけではありません。

あくまでも私の経験上からの説明であることをご了承願います。

 

もし、当該記事内容に関して、複眼的観点よりM&A仲介事業会社の目線で更に詳細は情報を入手したい方は以下のリンクを参照ください。

 

クロスボーダーM&Aとは?目的・メリットと成功のポイントから事例まで解説

 

クロスボーダーM&Aの目的や手法、海外市場の動きについて説明されている記事です。

記事は株式会社FUNDBOOKさんのWebページにリンクしています。

 

ビジネスDDの専門チームや法務DDの専門チーム、ファイナンシャルアドバイザーが使用する言葉や単語にも興味あり、気になる単語や文言はよくインターネットでその意味を調べてきました。

 

ちなみに環境デューデリジェンスって何?となった読者の方は以下の記事を参照ください。

 

環境デューデリジェンスとは?環境デューデリジェンス(環境DD)とは? 突然ですが、読者のみなさん(あなた)に質問です。 デューデリジェンスっ...

 

この環境デューデリジェンスの専門サイトは、M&A係る人又は今後M&Aに係ってみたい人に環境デューデリジェンスに関する知識や情報をを少しでも多く知ってもらう為の普及活動をしているサイトです。

 

最後まで読んで頂き有難う御座いました。