こんなことを書いてます
立場の違いによる環境DDの種類主な業務仕様とは?
読者の方(あなた)にとって環境デューデリジェンスってどんなイメージですか?
土壌汚染問題ですか?環境コンプライアンス問題ですか?それとも水不足などの自然環境問題ですか?
実はM&A案件の立場に関連して環境デューデリジェンスには大きく分けて2つのタイプがあります。さらに、業務仕様は多彩で、単体の業務仕様を組み合わせることもできます。
例えば、上に書いている土壌汚染問題と環境コンプライアンス問題を調査する為の各々の業務仕様は異なりますが、1回の環境デューデリジェンスの中で2つの業務仕様を実施するということは可能です。
なんとなく、イメージが共有できたでしょうか?
立場によって異なる環境デューデリジェンスの種類って何?
立場の違う2つのタイプの環境デューデリジェンスは、M&A案件における目的やDDに費やすことができる期間が異なります。
1つ目の環境デューデリジェンスは、M&A案件において買収を検討する立場の企業やファンドが、M&A取引の制限されたDD期間内に対象工場や土地に関する環境面の懸念事項を把握するための環境デューデリジェンスです。
読者の方はもうご存知だと思いますが、この「環境デューデリジェンスの専門サイト」で書かれていることの殆どが、この買い手企業が実施する環境デューデリジェンスのことです。
買い手企業が実施する環境デューデリジェンスでは、重大な土壌汚染や法令違反の発覚が買収の判断、買収金額、M&A成立後の統合プロセス (PMI) において重大は影響を及ぼす可能性が高いことから可能な限り詳細な調査が必要となります。
調査期間はM&A取引のプロセスに左右されますが、基本的に30~90日間と制限され、スピーディーな業務の遂行が求められます。
2つ目の環境デューデリジェンスは、M&A案件において売却を検討する立場の企業やファンドがM&A取引に先立って、対象となる土地や工場の環境に関する懸念事項を把握するための環境デューデリジェンスです。
売り手企業がM&A取引前に、M&Aの対象となりそうな工場や土地の環境面の懸念事項等の情報を調査することで、DD期間内の質問及び回答 (QA)シートの対応やマネジメントインタビュー等において、売り手企業から情報開示として環境面に係る説明責任を果たすことができます。
環境デューデリジェンスの実施のタイミングに関しては、M&A取引前から調査を開始できることから、自社での調整次第ということになり調査期間に制限がありません。
別名Seller’s 環境DDとも呼ばれています。
買い手企業が実施する環境デューデリジェンスと売り手企業が実施する環境デューデリジェンスの目的、概要、調査期間を整理して図にしてみました。

目的に応じて異なる環境デューデリジェンスの主な業務仕様って何?
次にM&A案件の目的に応じて異なる環境デューデリジェンスの種類について書いていきます。
私の経験上、環境デューデリジェンスはM&A取引のDD期間に実施する環境面のデューデリジェンスの総称であり、実際の調査の実務では目的に応じて業務仕様やアプローチ方法が異なります。
以下に目的に応じて必須となる業務仕様を整理してみました。これも経験の話になってしまいますが、大きく分けて3つあります。
環境デューデリジェンスで重要視する項目
土壌・地下水汚染問題の把握
必須となる業務仕様
フェーズ 1 & 2 環境サイトアセスメント調査 (Phase 1 & 2 ESA)
環境デューデリジェンスで重要視する項目
環境・労働安全衛生の法令違反の把握
必須となる業務仕様
環境・労働安全衛生法令順法監査又は評価 (環境DDでは調査範囲が限定されることが多い)
環境・社会デューデリジェンスで重要視する項目
環境・社会面の問題の把握 (環境では水不足や異常気象などの自然環境が対象)
必須となる業務仕様
自然環境、人権問題、サプライチェーン管理の評価
環境デューデリジェンスは、目的や企業のM&Aに関する方針(ポリシー)に基づいて業務仕様やアプローチ方法を決定する必要があります。
なので買い手企業は、環境デューデリジェンスでどの項目を重点的に評価したいのかをM&A取引のDD期間前に決定しておく必要があります。
また、環境コンサルタント会社は、環境デューデリジェンスを企業の環境DD担当者から依頼された際に、必ず企業の環境DD担当者が依頼しようとしている環境デューデリジェンスの種類や業務仕様を確認しなければなりません。
一般的に環境デューデリジェンスという総称で呼ばれがちですが、ここまで書いてきた内容のとおり、環境デューデリジェンスには色々な目的があり、その目的に応じて業務仕様が異なるということです。
既におなたも気が付いていると思いますが、環境コンサルタント会社はもちろんのこと、企業の環境DD担当者も環境デューデリジェンスの業務仕様の種類を知っていなかれば、良い環境デューデリジェンスができないということです。
例えば、土壌汚染問題の把握を目的とした環境デューデリジェンスを実施する必要があるのに業務仕様が環境・労働安全衛生のコンプライアンス問題を把握するための調査のみでは、とても非効率ですよね。
以下に目的に応じた環境デューデリジェンスの主な業務仕様を整理してみました。参考になれば幸いです。

フェーズ1環境サイトアセスメントと環境・労働安全衛生監査では、主なチェック項目も主な確認事項も異なります。
ちなみに、フェーズ1&2と書かれているミスはご愛敬です。
あなたは既に気がつかれていると思いますが、フェーズ2はまた別の記事で詳細を書こうと思います。
図ではフェーズ1のことのみが記載されています。心の中でフェーズ2の単語を消してください(笑)。
次に環境・社会・ガバナンスの評価に関する業務仕様です。
所謂、ESGデューデリジェンスです。ESG投資や企業のESGレポートなどで近年、知名度を上げてきている言葉ですよね。
このESGの評価も環境デューデリジェンスに組み込みことが可能です。

1点、注意しなければならないことがあります。ESGの環境はどちらかというと自然環境の評価として取り扱われるのが一般的です。
仮にあなたが企業の環境DDの担当者であって、初めて環境デューデリジェンス業務を担当される際は、環境デューデリジェンスを委託する予定の環境コンサルタント会社にあなたが想定されている環境デューデリジェンスの目的や企業方針を事前に共有し、詳細な業務仕様を相談するほうが良いですね。
一方で、企業の環境DD担当者から相談を受けた環境コンサルタント又は技術者は、M&A案件の目的や企業方針を考慮し、適切な業務仕様を検討し、最善の提案ができるように頑張ってみてください。
安心してください。誰にでも最初の一歩はあります。
ちなみにあなたにとって、この記事がこの専門サイトの最初の記事だった場合は以下の記事を参照ください。

最後まで長文を読んで頂き有難う御座いました!