環境DDの各フェーズ(Phase)の流れについて
環境デューデリジェンスを実施する中で、M&A取引のプロセスや環境デューデリジェンスのプロセスを理解しておくことはとても重要なことです。
読者の方(あなた)もそう考えておられるはずです。
環境デューデリジェンスには色々なプロセスや流れがあります。
上述の通り、M&A取引のプロセスや環境デューデリジェンスのプロセス、現地調査の1日間の流れ、Q&Aシートのやり取りの流れなども該当します。
そして、この記事で書こうとしている各フェーズの流れです。
この各フェーズは、土壌汚染問題などを特定するために実施されるフェーズ1環境サイトアセスメント調査などに関する「フェーズ」の流れです。
極まれに、フェーズ1環境デューデリジェンスという言葉が使用されますが、この言葉の中の「フェーズ」とは意味が異なります。ただ、近い意味の言葉ではあります。この異なる「フェーズ」の使い方は別の記事で書きます。
改めて書きますが、今回の記事の「フェーズ」はフェーズ1環境サイトアセスメント調査などに関する「フェーズ」です。
下記の記事の「立場の違いによる環境DDの種類と主な業務仕様について」でも書いているとおり、買い手企業が実施する環境デューデリジェンスの調査期間は一般的に30~90日間と制限されることが多く、スピーディーな業務の遂行が求められます。
一方で、売り手企業が実施する環境デューデリジェンス (別名Seller’s DD) は、M&A取引前から調査を開始できることから、自社での調整次第ということになり調査期間に制限がありません。
ただし、操業に影響を与えるフェーズ 2 環境サイトアセスメント調査や情報の機密性などを考慮すると、Seller’s DDも可能な限り短い期間で実施することを推奨します。
30日~90日間という短いデューデリジェンス期間の中で、買い手企業が効率が良く適正な環境デューデリジェンスを実施するには、環境デューデリジェンスの各フェーズの流れを理解しておく必要があります。
環境DDの各フェーズの作業って重複して進めることができるのか?
結論から書いていきますと、フェーズ 0.5 とフェーズ 1 の調査期間を重複させることができますが、フェーズ 1 とフェーズ 2 は重複させることができません。
理由としては、一般的な環境デューデリジェンスでは、フェーズ1の結果に基づいて、フェーズ2の実施を検討するからです。
上記の記事でも書いていますが、概要をここで書いておきます。
🔹フェ-ズ 1環境サイトアセスメント調査では、土壌汚染のおそれなどの特定を行い、特定された「おそれ」に対して定性的な評価を行います。
つまり、潜在的な土壌汚染の可能性があるか否かの評価です。
🔹フェーズ 2環境サイトアセスメント調査では、土壌試料採取を実施し、分析値と基準値を比較することで、汚染の有無に関して定量的な評価を行います。
つまり、汚染があるか無いかの評価です。
🔹フェ-ズ 0.5 調査は、フェ-ズ 1環境サイトアセスメント調査から現地調査を取り除いた業務内容になり、関連資料のレビューのみの業務です。
フェ-ズ 1環境サイトアセスメント調査で土壌・地下水汚染のおそれなどの特定を行い、フェ-ズ 2環境サイトアセスメント調査でそのおそれの範囲の土壌又は地下水を採取し、分析した後に基準値と比較することで汚染の有無を評価します。
事前準備をしっかりとして、フェーズ 1 とフェーズ 2を連続的に実施することは可能ですが、企業の環境DD担当者と環境コンサルタント会社の連携が重要になります。
連携が重要となる理由としては、FA間同士のフェーズ2の実施日の調整や企業側の予算の確保、環境コンサルタント会社側の土壌掘削業者の手配などがフェーズ1の結果を基に、数日単位の期間で全てをクリアにしなければならないからです。
したがって、フェーズ2の実施までを環境デューデリジェンスの業務仕様とするのであれば、FAと企業の環境DD担当者と環境コンサルタント会社の3社である程度の仮定スケジュールを協議しておく必要があります。
各フェーズで重複が可能なフェーズを図に整理してみました
各々の立場が以下の準備をしておくことで、より効果的に環境デューデリジェンスを進めることができます。
ファイナンシャルアドバイザー(FA):企業の環境DD担当者からフェーズ2までの実施の意思を確認しておき、売り手企業のFAに伝えるタイミングを検討する。
企業の環境DD担当者:環境コンサルタント会社に事前に大よそのフェーズ2概算金額の算出を依頼しておき、購買部や経理部及び経営陣の許可を得て、フェーズ2用の予算を確保しておく。
環境コンサルタント会社:土壌掘削会社や分析会社のスケジュールを確認しておく。
最後まで読んで頂き有難う御座いました。