こんなことを書いてます
令和元年度 環境省 土壌汚染調査技術管理者試験の過去問の解答に挑戦 (その1)
環境デューデリジェンスを実施する中で、取得しておくことが望ましい資格があります。それが、環境省が認定する土壌汚染調査技術管理者の試験です。
土壌汚染調査技術管理者試験は2010年度から試験の実施が開始された国家資格の為の試験です。
主に土壌汚染対策法に基づいた問題が出題され、試験に合格すると国内で土壌汚染対策法に基づいた調査を行うことができる指定調査機関の技術管理者になることができます。
環境コンサルタント会社向けの試験ですが、企業で環境DDを担当する方でも勉強することで土壌汚染問題の基本的な知識を蓄えることができます。
土壌汚染調査技術管理者試験の合格率など
土壌汚染調査技術管理者試験は難しいのか?という点ですが、令和元年度の合格率(6.4 %)を見るとかなり難しい試験だといえます。
令和元年度 土壌汚染調査技術管理者試験の合格基準は、次の(1)及び(2)を満たすことと発表されています。
(1)総合得点率 65 % 以上(52問 / 80問以上)
(2)問題区分別得点率
調査 30 % 以上
対策 30 % 以上
法令等 30 % 以上
調査、対策、法令等の一定の知識が必要になるということです。
ちなみに、令和元年の問題の数は、以下のとおりです。
調査 : 問1~問35
対策 :問1~問25
法令等:問26~問45
資格名が土壌汚染調査技術管理者試験なので、調査の問題が一番多いようです。
次に、受験申請者数、受験者数、合格者数、合格率です。
令和元度 土壌汚染調査技術管理者試験結果
受験申請者数 : 1,153名
受験者数 : 878 名
合格者数 : 56 名
合格率 : 6.4 %
合格率が約6 %の試験なので、土壌汚染問題に触れたことがある方でも、合格するとなると結構な勉強時間が必要となるのかもしれません。
しかし、ここで立ち止まる訳にはいきません。早速問題を知識習得の為に解いていこうと思います。
ただ、私の個人的な見解と知識で解いていきますので、答えが間違っていたらすいません。仮に答えが間違っていたとしても、私は責任を取りませんのでご了承下さい。
「令和年度 土壌汚染調査技術管理者試験の過去問の解答に挑戦」というシリーズでは、令和元年度に土壌汚染調査技術管理者試験が実施されているので、以下の土壌汚染対策法に関連するガイドライン等を参照しています。
過去問題 令和元年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 1
問題 1 下の表は地下水汚染が到達し得る距離の算定を行うために、土質区分ごとにパラメータの値を設定したものである。次のA~Eに該当する土質の組み合わせとして、もっとも適当なものはどれか。
A B C D E
(1) 礫 砂礫 砂 火山灰質土 シルト質砂
(2) 礫 砂礫 砂 シルト質砂 火山灰質土
(3) 火山灰質土 シルト質砂 砂礫 礫 砂
(4) 火山灰質土 シルト質砂 砂 砂礫 礫
(5) シルト質砂 火山灰質土 砂 砂礫 礫
以下の記事の【地下水が到達し得る距離の一般値の設定経緯】を参照下さい。
特定有害物質を含む地下水が到達し得る「一定の範囲」の考え方(Appendix-1)の解説
私は、まず透水係数に注目しました。
そして、1 x 10-3(m/秒)に注目し、Eを礫と判断しました。
そうするとDとEに正解が絞られるわけです。
次に火山灰質土とシルト質砂の数値を確認しました。
火山灰質土(関東ローム)の情報は以下の通りです。
透水係数:1 x 10-5(m/秒)
有効間隙率:0.2
シルト質砂の情報は以下の通りです。
透水係数:1 x 10-6(m/秒)
有効間隙率:0.15
したがって、私の見解では、回答が「(5)」になります。
過去問題 令和元年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 2
問題 2 土壌環境中における化学物質の移動性に関する次のA~Eの記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
A 1,4‒ジオキサンは水に溶けにくく揮発性が高いので、土壌ガス調査で感度よく検出できる。
B クロロエチレンは常温常圧で密度が水より大きい液体であり、トリクロロエチレンよりも水への溶解性及び揮発性が高く土壌環境中での移動性が高い。
C 酸化鉛は強酸性及び強アルカリ性の両条件下で溶解度が高まるので、対策時には pH のコントロールが重要である。
D 金属水銀は水銀蒸気を生成し、温度が上昇すると揮発量が増える。
E シアン化合物の中の遊離シアンは水によく溶け移動性が高く、強アルカリ性条件の下ではシアン化水素ガスを生成するおそれがある。
(1) A、B
(2) B、D
(3) C、D
(4) C、E
(5) D、E
A~Eの記載について正誤を確認していきます。
Aの記載に関しては、環境省の開示資料を参考にしました。
土壌の汚染に係る環境基準の追加及び地下水の水質汚濁に係る環境基準における項目名の変更並びに土壌汚染対策法の特定有害物質の追加等に伴う土壌汚染対策法の運用について
当該資料の中に以下の記載がありました。
1,4-ジオキサンについては、土壌ガス調査を適用しても、その特性から検出が困難であるため効率的な調査が行えず、相対的に物性が近い第一種特定有害物質と同等の合理的な対策を行うことが難しいこと等から、当面は法の特定有害物質には指定せず、汚染実態の把握に努め、併せて効率的かつ効果的な調査技術の開発を推進するとともに、合理的な土壌汚染対策手法が構築できた段階で改めて特定有害物質への追加について検討することとし、当面は法規制の対象外とする。
したがって、Aは誤りです。
Bの記載に関しても環境省の開示資料を参考にしました。
https://www.env.go.jp/chemi/report/h15-01/pdf/chap01/02-2/04.pdf
当該資料の中に以下の記載がありました。
クロロエチレン
比重:0.9106(20℃) ※水は1です。
したがって、Bは誤りです。
Cの記載に関しては以下のWeb上のSDSの情報を参考にしました。
当該資料の中に以下の記載がありました。
溶解性:水に不溶、アルカリ・熱酸に可溶
正確な根拠という部分では不十分ですが、Cは正しいと判断しました。
Dの記載に関しては環境省の開示資料を参考にしました。
当該資料の中に以下の記載がありました。
金属水銀は、常温で液体である唯一の金属であること、常温でも飽和蒸気濃度が非常に高い。
一般な考え方で温度が上昇すれば揮発量が増えると考えられるので、Dは正しいと判断しました。
Eの記載に関しては、情報がほとんどありませんでした。
但し、以下のWebサイトより遊離シアンからシアン化水素ガスが発生することが理解できました。
また、強アルカリ性条件下では、シアン化水素よりシアン化合物イオンとして存在することが理解できました。
したがって、Eは誤りです。
私の見解では、回答が「(3)」になります。
過去問題 令和元年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 3
問題 3 化学物質による健康影響を示した次の表のA~Dに該当する化学物質の組み合わせとして、もっとも適当なものはどれか。
A B C D
(1) カドミウム セレン 水銀 砒素
(2) カドミウム 鉛 水銀 砒素
(3) セレン 鉛 砒素 水銀
(4) 水銀 鉛 カドミウム セレン
(5) セレン 砒素 カドミウム 鉛
この問題は公益財団法人 日本環境協会の資料を参考にしました。
(B) 土壌汚染対策法の特定有害物質の用途・環境基準等の情報
当該資料の中に以下の記載がありました。
カドミウム及びその化合物
カドミウムは、人体に長期間にわたって取り込まれると、障害を生じさせることが知られています。カドミウム中毒の事例として、日本では、鉱山から排出されたカドミウムに汚染された地域で 発生したイタイイタイ病があります。
カドミウムに関する疫学調査は世界各国で行われており、口から長期間にわたってカドミウムを取り込むと、近位尿細管機能障害(腎臓の組織の一部である近位尿細管の再吸収機能が影響を受け、低分子量たんぱく質の尿中排せつ量が増加する障害)を主な症状とする腎機能障害が生じることが知られています。
セレン及びその化合物
セレンは人にとって必須元素とされ、過酸化水素や遊離過酸化物を還元する酵素を構成する物質 です。
セレンの欠乏が原因と疑われる疾患として中国東北部の克山病(心筋障害の一種)があげられています。
また、家畜の筋ジストロフィーや成長阻害に対して、セレンを与えることで予防できた事例も報告されています。
水銀及びその化合物
水銀は脳の中に蓄積しやすく、体内で酸化反応を受ける前に脳に移行すると水銀によって中枢神経障 害を起こすおそれがあります。
砒素及びその化合物
慢性の中毒症状としては、砒素に汚染された井戸水を飲んだことによって、皮膚の角質化や色素沈着、末梢性神経症、皮膚がん、末梢循環器不全などが報告されています。
鉛及びその化合物
鉛は、人体への蓄積性があることから、消化管からの吸収率が高く、最も感受性が高い乳児の代謝研究結果から、TDI(耐容一日摂取量)は体重1kg当たり1日0.0035mgと算出され、これに基づいて水道水質基準や水質環境基準が設定されています。なお鉛は、人の臓器や組織に通常でも存在する物質です。
したがって、私の見解では、回答が「(1)」になります。
過去問題 令和元年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 4
問題 4 法における 1,2‒ジクロロエチレンの取り扱いに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)土壌溶出量試験においてシス体とトランス体についてパージ・トラップ‒ガスクロマトグラフ質量分析法で測定した。
(2)土壌溶出量の測定の結果、シス体及びトランス体がそれぞれ定量下限値以上であったので、これらを合算した後に桁数処理を行い、有効数字を2桁として、3桁目以降を切り捨てた。
(3)地下水の水質分析においてシス体の報告値が 0.072 mg/L であり、トランス体の報告値が定量下限値(0.004 mg/L)未満であったので、1,2‒ジクロロエチレンの報告値を0.072 mg/Lとして報告した。
(4)土壌ガス調査においてシス体とトランス体の両物質が検出されたので、シス体とトランス体の各々について、濃度が連続する他の単位区画と比較して大きい単位区画を選定し、土壌溶出量調査の試料採取地点とすることとした。
(5)シス‒1,2‒ジクロロエチレンを対象として形質変更時要届出区域に指定され、原位置浄化を行い区域指定が解除された土地については、解除された時点ではトランス体を含む 1,2‒ジクロロエチレンによる土壌汚染のおそれはないものと判断してよい。
(1)~(5)の記載内容の正誤を確認しました。
(1)に関しては、以下の記事を参照ください。
記事内に記載ある規格K0125にはパージ・トラップ‒ガスクロマトグラフ質量分析法の記載があります。
Japanese Industrial Standards Committeeのサイト
したがって、(1)は正しいです。
(2)に関しては、土壌汚染対策法のガイドラインで以下の記載を確認しました。
土壌溶出量調査に係る測定方法(環境省告示第18号 平成15 年3月6日:最終改正平成31年3月20日)についての補足
・シス体とトランス体が両方とも定量下限値以上の場合は、シス体とトランス体の測定値の和を測定値とし、報告値は有効数字を2桁として、3桁目以降を切り捨てて表示する。
・シス体とトランス体のいずれか一方が定量下限値未満で、いずれか一方が定量下限値以上の場合は、定量下限値以上の方の測定値を測定値とし、報告値は有効数字を2桁として、3桁目以降を切り捨てて表示する。
・シス体とトランス体が両方とも定量下限値未満の場合は、「定量下限値未満」と表示することとする。
したがって、(2)は正しいです。
(3)に関しては、土壌汚染対策法のガイドラインで以下の記載を確認しました。
地下水に含まれる試料採取等対象物質の量の測定方法(環境省告示第 17号 平成15年3月6日:最終改正平成31年3月20日)についての補足
・シス体とトランス体が両方とも定量下限値以上の場合は、シス体とトランス体の測定値の和を測定値とし、報告値は有効数字を2桁として、3桁目以降を切り捨てて表示する。
・シス体とトランス体のいずれか一方が定量下限値未満で、いずれか一方が定量下限値以上の場合は、定量下限値以上の方の測定値を測定値とし、報告値は有効数字を2桁として、3桁目以降を切り捨てて表示する。
・シス体とトランス体が両方とも定量下限値未満の場合は、「定量下限値未満」と表示することとする。
したがって、(3)は正しいです。
(4)に関しては、土壌汚染対策法のガイドラインで以下の記載を確認しました。
1,2-ジクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペンについては、シス体とトランス体の測定値の和の値によって検出範囲を判定する(土壌の汚染に係る環境基準の見直し及び土汚染対策法の特定有害物質の見直し等に伴う土壌汚染対策法の運用について 平成 31 年3月1日)。
「シス体とトランス体の測定値の和の値によって検出範囲を判定する」と記載されているので、「シス体とトランス体の各々について」ではないです、
したがって、(4)は誤りです。
(5)に関しては、土壌汚染対策法のガイドラインで以下の記載を確認しました。
平成 31 年3月 31 日以前にシス体又はその親物質を区域指定対象物質として要措置区域等に指定され、土壌汚染の除去等を行ったことにより、下記2点の条件で区域指定が解除された土地について、平成 31年4月1日以降に新たな土壌汚染状況調査の契機が生じた場合、1,2-ジクロロエチレンによる土壌汚染のおそれがないものとして判断する。
・掘削除去により区域指定が解除された土地
・原位置浄化を行ったことにより、区域指定が解除された場合であって、シス体について工事完了後の地下水モニタリングにおいて地下水基準に適合していることが確認された土地
したがって、(5)は正しいです。
私の見解では、回答が「(4)」になります。
過去問題 令和元年度 土壌汚染調査技術管理者試験 問題 5
問題 5 法の土壌汚染のおそれの把握(地歴調査)における資料調査において、入手・把握すべき資料の種類に関する次のA~Eの記述のうち、適当なものの組み合わせはどれか。
A 社史については、特定有害物質の使用等、埋設等及び貯蔵等に関する記録ではないため、資料収集の対象とする必要はない。
B 公図と土地所有者が実測した図面の範囲が異なる場合、公的に認められた資料である公図の内容を優先すべきである。
C 平成 23 年にトリクロロエチレンに対する原位置浄化を行い区域指定が解除された範囲図を入手できたので、その範囲は汚染のおそれがないものと判断し、浄化の詳細な資料までは収集する必要はない。
D 調査地内の建物の竣工図面類は、特定有害物質の使用等、埋設等及び貯蔵等に直接は関連しないが、特定有害物質を含む排水が流れた配管の情報が得られる場合があるため収集すべきである。
E さく井の柱状図は、井戸設置のために作成されたものであるが、地質の情報が得られる場合もあるので収集対象とすべきである。
(1) A、C
(2) A、D
(3) B、C
(4) B、E
(5) D、E
Aに関して、土壌汚染対策法のガイドラインの資料調査において入手・把握すべき資料の種類(参考例)では、土地の用途に関する資料として社史は含まれています。
したがって、Aは誤りです。
Bに関して、以下の国土交通省のサイトで公図の正確性について確認しました。
当該サイトには以下の記載がありました。
公図は、地図が備え付けられるまでの間、「地図に準ずる図面」として地図に代わって備え付けられている図面で、土地の大まかな位置や形状を表すものです。
公図の多くは、明治時代の地租改正に伴い作成されたもので、現況と大きく異なる場合があります。
土地所有者が実測した図面の方が信頼できるということです。
したがって、Bは誤りです。
Cに関して、基本的に原位置浄化を行い区域指定が解除された範囲が操業等から完全に独立していなければ、汚染のおそれがないものと判断できないはずです。更にどのような浄化が実施されていたかを把握する必要性が地歴調査にはあります。
したがって、Cは誤りです。
Dに関して、土壌汚染対策法のガイドラインの資料調査において入手・把握すべき資料の種類(参考例)では、土地の用途に関する資料として建物・施設配置図が含まれています。
建物・施設配置図や配管図、廃水経路図等は建物の竣工図面類に含まれます。
したがって、Dは正しいです。
Eに関して、土壌汚染対策法のガイドラインの資料調査において入手・把握すべき資料の種類(参考例)では、地表の高さの変更、地質に関する資料としてさく井工事記録や地質柱状図が含まれています。
さく井の柱状図はさく井工事記録や地質柱状図に含まれます。
したがって、Eは正しいです。
私の見解では、回答が「(5)」になります。
なんとか、問題5まで回答することができました。
環境デューデリジェンスの基礎知識の為に、今後も残りの問題を解いていこうと思います。
既に上述していますが、私の個人的な見解と知識で解いていきますので、答えや答えを導く過程が間違っていたらすいません。
仮に間違っていたとしても、私は責任を取りませんのでご了承下さい。
頑張ってひとつひとつ、ダブルチェック的な観点で調べてみてください。
しかし、令和元年の土壌汚染調査技術管理者試験は合格率が約6%なので難しいですね。
焦らずに、一問一問を読んで理解してみてください!頑張ってください!
一方でこの土壌汚染調査技術管理者試験には、多くの参考書が販売されています。
もし、読者の方が購入されるなら自分に合った参考書をちゃんと選んでください。
私は、土壌汚染問題の基礎が分かる本を買いました。
あと、既に上述していますが、私の個人的な見解と知識で解いていきますので、答えや答えを導く過程が間違っていたらすいません。
仮に間違っていたとしても、私は責任を取りませんのでご了承下さい(笑)。
頑張ってひとつひとつ、ダブルチェック的な観点で調べてみてください。
さて、私は小説を寝る前に本としてゆっくり読みたいタイプの人間ですが、勉強で読む本や参考書はスマートフォンやタブレットで通勤中にAmazon Kindleで読み込むタイプです。
以下の本を何回も参考書のように読んでいます。
そして、最近は通勤中や散歩中にAmazon Audibleで本を聞いています。
もちろん、自分の知識になりそうな本です。
今聞いているのは、バリュエーションの教科書:企業価値・M&Aの本質と実務です。
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最後まで一緒に問題の回答を考えて頂き有難う御座いました。