土壌汚染調査技術管理者試験

土壌汚染対策法の特定有害物質のまとめ【環境省 公表の平成31年度 改正土壌汚染対策法含む】

土壌汚染対策法の特定有害物質のまとめ【環境省 公表の平成31年度 改正土壌汚染対策法含む】

 

土壌汚染調査において、土壌汚染対策法で定められている特定有害物質を理解しておくことは重要です。

土壌汚染調査技術管理者試験の勉強にも十分に役立つことになるでしょう。

 

土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第3版)において、特定有害物質という単語があらゆる章の文章で確認することができます。

 

そうなんです。色々な箇所に特定有害物質に関する情報が記載されているので、ストンと頭に入ってこないというのが私の悩みでした。

したがって、特定有害物質に特化して土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第3版)を読んでみようと考えたわけです。

 

環境デューデリジェンスの基礎を学びたい読者の方、令和元年の土壌汚染調査技術管理者試験の勉強をされている読書の方、是非、この記事を参考にしてみてください。

 

まず、特定有害物質とは?という点から書いていきます。

 

土壌汚染対策法の特定有害物質とは?

 

土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第3版)では、特定有害物質が以下のとおり説明させています。

 

法の対象となる「特定有害物質」とは、鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいい、政令において26物質が定められている。

特定有害物質は、第一種特定有害物質(12物質)、第二種特定有害物質(9物質)及び第三種特定有害物質(5物質)からなる。

 

特定有害物質は、対象となる各々び有害物質の特性より第一種特定有害物質第二種特定有害物質第三種特定有害物質の3つの種類に分類されています。

また、以下の経路を介して人の健康に係る被害を生じさせるおそれがある有害物質と説明されています。

 

🔶 土壌を直接的に摂取すること

🔶 土壌中の有害物質が地下水に溶出し、その地下水を摂取すること

 

この人の健康に係る被害を生じさせるおそれがある有害物質という観点は、土壌汚染対策法の本質的な目的に関係しています。

 

改めて、土壌汚染対策法の本質的な目的を記載しておきます。

 

土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染に よる人の健康に係る被害の防止に関する措置等を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする。

 

この本質的な目的を土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第3版)では、もう少し具体的に説明していました。

私の解釈で以下のように整理してみました。

 

① 新たな土壌汚染の発生を未然に防止すること

②適時適正に土壌汚染の状況を把握すること

③土壌汚染による人の健康被害を防止すること

 

①~③の具体的な目的がありますが、土壌汚染対策法で重要とされているのが②と③です。

 

①に関しては、水質汚濁防止法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、既にカバーされている内容です。

 

例えば、水質汚濁防止法における特定施設の設置及び廃止の届出、防液提の設置や廃棄物の処理及び清掃に関する法律における廃棄物の保管基準やマニフェストによる管理があげられます。

特定有害物質の定義における人の健康に係る被害を生じさせるおそれがある有害物質という観点は、この③の土壌汚染による人の健康被害を防止することに関係しているということです。

 

次に、特定有害物質の種類に関して書いていきます。

 

土壌汚染対策法の特定有害物質のリスト一覧(種類)

 

特定有害物質には、第一種特定有害物質(12物質)、第二種特定有害物質(9物質)及び第三種特定有害物質(5物質)があります。

土壌汚染対策法は2003年に初めて施行させ、2019年4月1日までに何回が改正されています。

その改正の中で、特定有害物質の種類も変更されています。

 

まずは、以下の土壌汚染対策法における特定有害物質のリストを以下に記載します。

以下のリストは、令和元年(2019年)6月30日の特定有害物質になります。

 

土壌汚染対策法 特定有害物質 一覧

 

以下のとおり、各々の物質の特性に合わせて分類されていることがわかります。

 

第一種特定有害物質:揮発性有機化合物

第二種特定有害有害物質:重金属等

第三種特定有害物質:農薬等

 

各々の種別毎の有害物質に関しては後述します。

 

ここで、一点、私が気になることを書いておきます。

 

土壌汚染対策法では、特定有害物質に油分が含まれていません。

 

正確には、間接的にガソリンに含まれているベンゼン(第一種特定有害物質)や過去の有鉛ガソリンに含まれていた鉛及びその化合物(第二種特定有害物質)が含まれていますが、海外の多くの地域の法規制で定められている全石油系炭化水素TPH:Total Petroleum Hydrocarbon)は特定有害物質として定められていません。

 

なぜ、油分は含まれていないのか?

 

油汚染に関しては、以下の記事を参照ください。

 

油汚染土壌と国内の環境デューデリジェンスについて油汚染土壌と国内のM&A環境デューデリジェンスについて 土壌汚染には、実は色々と種類があります。 どういうこと?...

 

 

油汚染土壌と海外の環境デューデリジェンスについて油汚染土壌と海外のM&A環境デューデリジェンスについて 前回の記事では国内における環境デューデリジェンスにおいて、油汚...

 

ここからは、各々の特定有害物質の種類について書いてきます。

 

特定有害物質 一種(1種)

 

現状、特定有害物質の第一種特定有害物質は12種類の物質が定められており、揮発性有機化合物です。

 

クロロエチレン (別名 塩化ビニル又は塩化ビニルモノマー)

四塩化炭素(別名 テトラクロロメタン、カーボンテトラクロライド、パークロロメタン)

1,2-ジクロロエタン(別名 エチレンクロライド、二塩化エタン、二塩化エチレン)

1,1-ジクロロエチレン (別名 1,1,-ジクロロエテン、塩化ビニリデン、二塩化ビニリデン)

1,2-ジクロロエチレン

1,3-ジクロロプロペン(別名 D-D)

ジクロロメタン(別名 塩化メチレン、メチレンクロライド、メチレンジクロライド、二塩化メチレン)

テトラクロロエチレン (別名 パークロロエチレン、四塩化エチレン、俗称:パークレン)

1,1,1-トリクロロエタン (別名 メチルクロロホルム、1,1,1-TCE、MC)

1,1,2-トリクロロエタン (別名 ビニルトリクロリド、エタントリクロリド)

トリクロロエチレン (別名 TCE、トリクロロエテン、アセチレントリクロライド)

ベンゼン (別名 ベンゾール)

 

主に塩素系の物質が主体となっています。

第一種特定有害物質には別名があるものが多いです。12種類の物質名のみを覚えているだけでは、実施の環境デューデリジェンスで大事な情報を見落としてしまう可能性があります。

出来る範囲で、12種類の第一種特定有害物質の別名も覚えましょう。

 

第一種特定有害物質には、基準値として溶出量基準のみが土壌汚染対策法で定められています。

 

地下水の摂取等によるリスクを評価する為です。

つまり、土壌中の有害物質が地下水に溶出し、当該地下水を人が摂取等する経路に着目し、土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質ということです。

 

第一種特定有害物質に関しては、平成31年4月の土壌汚染対策法の改正において物質名の変更等などがありました。

 

シス-1,2-ジクロロエチレンが、1,2-ジクロロエチレン(シス-1,2-ジクロロエチレンとトランス-1,2-ジクロロエチレンの和)になりました。

 

詳細は以下の記事を参照ください。

 

平成31年に環境省が改正する土壌汚染対策法の概要(特定有害物質)改正土壌汚染対策法の特定有害物質に関する変更点の概要を環境DDの観点で調べてみた結果 環境省は平成30年4月1日に改正土壌汚染...

 

特定有害物質 二種(2種)

 

現状、特定有害物質の第二種特定有害物質は9種類の物質が定められており、重金属等です。

 

なぜ、「等」なのでしょうか? 重金属ではダメなのでしょうか?

それは、シアン化合物が重金属ではないからです。しかし、土壌汚染対策法では、シアン化合物も重金属と同じ分類をしているので、「等」がついているということです。

 

カドミウム及びその化合物

六価クロム化合物

シアン化合物

水銀及びその化合物

セレン及びその化合物

鉛及びその化合物

砒素及びその化合物

ふっ素及びその化合物

ほう素及びその化合物

 

第二種特定有害物質の重金属等は、土壌汚染対策法が施行された時から物質名の変更や物質数に変更がありません。

 

第二種特定有害物質には、基準値として溶出量基準と含有量基準が土壌汚染対策法で定められています。

 

地下水の摂取等によるリスクと口からなどの直接摂取によるリスクを評価する為です。

つまり、土壌中の有害物質が地下水に溶出し、当該地下水を人が摂取等する経路と有害物質を含む土壌を直接摂取する経路に着目し、土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質ということです。

 

基本的に土壌汚染の割合は、この第二種特定有害物質の重金属等による汚染が多いの現状です。

特に鉛及びその化合物や砒素及びその化合物が代表的です。

 

特定有害物質 三種(3種)

 

現状、特定有害物質の第三種特定有害物質は5種類の物質が定められており、農薬等です。

 

2-クロロ-4,6-ビス(エチルアミノ)-1,3,5トリアジン(別名シマジン又はCAT)

N,N-ジエチルチオカルバミン酸S-4-クロロベンジル(別名チオベンカルブ又はベンチオカーブ)

テトラメチルチウラムジスルフィド(別名チウラム又はチラム)

ポリ塩化ビフェニル(別名PCB)

有機りん化合物(ジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名パラチオン)、ジメチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名メチルパラチオン)、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。)

 

第三種特定有害物質の農薬等も土壌汚染対策法が施行された時から物質名の変更や物質数に変更がありません。

私は、記憶力が良くないのでシマジンチオベンカルブチウラムPCB有機りん化合物の名称で覚えています。

経験上、第三種特定有害物質の農薬等が土壌汚染として発覚したプロジェクトは少ないです。

ただ、チウラムでややこしい案件があったという苦い記憶はあるのですが….(笑)。

 

第三種特定有害物質には、第一種特定有害物質と同様に基準値として溶出量基準のみが土壌汚染対策法で定められています。

 

地下水の摂取等によるリスクを評価する為です。

つまり、土壌中の有害物質が地下水に溶出し、当該地下水を人が摂取等する経路に着目し、土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質ということです。

 

特定有害物質 ダイオキシン

 

ダイオキシンも有害物質ではありますが、土壌汚染対策法での特定有害物質には定められていません。

ダイオキシンには、ダイオキシン特別措置法に基づいて土壌に関する基準が定められています。

ダイオキシンの土壌に関する環境基準は、1,000 pg-TEQ/g以下です。

また、土壌汚染の進行防止等の観点からモニタリングや調査を行う基準としての調査指標値が250pg-TEQ/gに設定されています。

 

汚染土壌の対策要件は、一般国民の居住・活動の場について1,000pg-TEQ/gが採用されています。

ダイオキシンの水質に関する環境基準は、年平均値1pg-TEQ/l以下です。

 

特定有害物質 分解生成物

 

特定有害物質の分解生成物については、平成31年4月の改正で新たに四塩化炭素の分解生成物としてジクロロメタンが追加されています。

 

また、第一種特定有害物質の試料採取等対象物質の分解生成物の取扱いに関する改正には注意が必要です。

整理するとこういうことです。

 

第一種特定有害物質の試料採取等の対象となる物質は….

 

土壌ガス調査の時

フェーズ1調査(地歴調査)の結果、使用などをしていた物質とその分解生成物

土壌溶出量調査の時

土壌壌ガス調査において土壌ガスが検出された物質とその親物質及び分解生成物

 

つまり、フェーズ1調査(地歴調査)の結果、テトラクロロエチレンの使用が確認された場合…

土壌ガス調査における試料採取等の対象となる物質は以下のとおりになります。

 

・テトラクロロエチレン

・トリクロロエチレン

・1,1-ジクロロエチレン

・1,2-ジクロロエチレン

・クロロエチレン

 

そして、土壌ガス調査の結果、トリクロロエチレンのみが検出された場合、土壌溶出量調査における試料採取等の対象となる物質は以下のとおりになります。

 

・テトラクロロエチレン (トリクロロエチレンの親物質)

・トリクロロエチレン (土壌ガス調査で検出)

・1,1-ジクロロエチレン (トリクロロエチレンの分解生成物)

・1,2-ジクロロエチレン (トリクロロエチレンの分解生成物)

・クロロエチレン (トリクロロエチレンの分解生成物)

 

土壌ガス調査で把握しきれなかった潜在的な土壌汚染の可能性を土壌溶出量調査再チャレンジするというような流れですね。

 

詳細は以下の記事を参照ください。

 

平成31年に環境省が改正する土壌汚染対策法の概要(特定有害物質)改正土壌汚染対策法の特定有害物質に関する変更点の概要を環境DDの観点で調べてみた結果 環境省は平成30年4月1日に改正土壌汚染...

 

特定有害物質 自然由来

 

土壌溶出量基準に適合しない特定有害物質の種類がシアン化合物を除く第二種特定有害物質の8種類のいずれかである場合、一定条件下において、自然由来の可能性が考えられます。

自然由来の可能性がある8種類の重金属は以下のとおりです。

 

カドミウム及びその化合物

六価クロム化合物

水銀及びその化合物

セレン及びその化合物

鉛及びその化合物

砒素及びその化合物

ふっ素及びその化合物

ほう素及びその化合物

 

自然由来の土壌汚染が発覚した場合、特定有害物質としては、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、ふっ素その化合物が多いというデータがあります。

これらの特定有害物質が土壌汚染対策法で定める基準を超過して検出された場合は、自然由来の検証も実施しなければなりません。

 

最後に…

 

私は環境デューデリジェンスの担当なので、土壌汚染対策法に関する特定有害物質を全てを完璧に説明できるわけではありません。

あくまでも私の経験上からの説明であることをご了承願います。

ただ、国内の環境デューデリジェンスを担当する上で知っておくべき内容であることにはかわりありません。

 

さらに令和1年(令和元年)の土壌汚染調査技術管理者試験の勉強にも役立つかもしれません。

 

ちなみに環境デューデリジェンスって何?となった読者の方は以下の記事を参照ください。

 

環境デューデリジェンスとは?環境デューデリジェンス(環境DD)とは? 突然ですが、読者のみなさん(あなた)に質問です。 デューデリジェンスっ...

 

この環境デューデリジェンスの専門サイトは、M&A係る人又は今後M&Aに係ってみたい人に環境デューデリジェンスに関する知識や情報をを少しでも多く知ってもらう為の普及活動をしているサイトです。

 

最後まで読んで頂き有難う御座いました。

こんな記事もおすすめ