環境DDの雑学

森友学園問題の土壌汚染と地中埋設物問題を環境デューデリジェンス(環境DD)の視点で解説

森友学園問題の土地売買取引に関する適切な環境デューデリジェンス(環境DD)の検討

 

読者の方も「森友学園問題」に関して、一度はニュースや新聞で内容を拝見されたことがあると思います。

独特なキャラクターの登場や政治家、公務員への追及等マスコミやワイドショーが毎日のように報道していた問題です。

キャラクターや国会での追及にマスコミや世間の関心が向かうと、マスコミ等の報道はそちらの方面へ勢いを増してしまい、結局のところ何が問題だったのかという本質的な課題が見えづらくなってしまったというのが私の印象です……。

 

先日、親しい友人と話をしていた時に、この話題について環境デューデリジェンス(環境DD)の視点で記事を書いてみるのはどうか?という話になりました。

 

記事を書き始める事前情報として、そもそも「森友学園問題」とは何なのかを調べてみました。

Wikipediaには以下の記載がありました。

 

森友学園問題では、学校法人森友学園の運営する塚本幼稚園幼児教育学園の教育、大阪府豊中市に設立予定だった瑞穂の國記念小學院の設置認可と国有財産払い下げについての議論および関係者の動静を扱う。

 

本サイトは環境デューデリジェンス(環境DD)の専門サイトですので、上文内の大阪府豊中市に設立予定だった瑞穂の國記念小學院に関する国有財産払い下げに関して書いていきます。

つまり、土地の売買に関連した土壌汚染や地中埋設物に関する課題について書いていくということになります。

 

本記事内の多くの情報はWikipediaを含むインターネットリサーチの結果を参照としています。特に会計検査院の会計検査結果は参考にさせてもらいました。

情報に誤りがないことを慎重に確認しながら記載していきますが、不備があった場合はお許しください。

 

事前情報として、大阪府豊中市に設立予定だった瑞穂の國記念小學院の位置は以下のとおりです。

 

 

近くに住んでおられる読者の方は、一度は見に行かれている土地かもしれませんね。

私は遠方なので、訪ねたことはありません。

 

森友学園の問題となった土地に関する経緯

 

ここからインターネットリサーチで入手した森友学園問題の土地に関する経緯を書いていきます。

始まりは1974年です。

プロ野球選手であった長嶋茂雄が「巨人軍は永久に不滅です」という有名なスピーチと共に現役を引退した年であり、超能力がブームになった年です。

 

森友学園問題の根本となる土地は、1974年に伊丹空港周辺の騒音対策区域に指定されことから住民から土地を順次買収し、土地の所有者は大阪航空局となっています。

その後、1989年に騒音対策区域が解除され、1993年に大阪航空局の行政財産から普通財産化されています。

 

2009年に大阪航空局がこの土地で実施した試掘調査でゴミ(埋設廃棄物と想定される)が発見され、2012年までに砒素・鉛の汚染土壌、コンクリートガラなどの地中埋設物が確認されています。

2011年、別の学校法人大阪音楽大学が約7億円で土地の売買交渉を近畿財務局としていますが、入札価格が鑑定価格約9億円に満たず、交渉は折り合わなかったとされています。

 

2013年6月、国から土地売却の公募が出されています。そして、2013年9月に森友学園から財務省近畿財務局に対し土地の取得要望書が出され、その後賃貸借契約締結に向けた交渉が開始されています。

財務省「「新成長戦略」における国有財産の有効活用」指針に則り2015年5月29日、森友学園と国との間で売買契約ではなく10年間の定期借地契約が締結され、学園により土壌改良及び地中のごみ撤去工事が行われています。

 

2016年3月1日、森友学園理事長と財務省理財局国有財産業務課国有財産審理室長が面会し、籠池理事長から新たにゴミが見つかったとしてゴミ撤去要請がなされ、2016年3月24日には学園代理人弁護士から土地売買契約の申込がされています。

そして、国土交通省大阪航空局から近畿財務局に対し、予算確保が難しいことからゴミ撤去費用を土地代金から値引きして売買契約を締結する提案がされています。

 

2016年3月30日、買い主側から見積の提示ないし撤去工事がなされる通常の手続きから外れる異例の手続きがとられ、近畿財務局から大阪航空局に対し、ゴミ撤去費用の見積り要請がされています。

2016年4月6日、大阪航空局から森友学園に対し、既成分ごみ撤去工事費用等として1億3,176万円が支払われています。

2016年4月14日、大阪航空局から近畿財務局に対し、新たなごみ撤去費用が約8億2,000万円と報告されています。

2016年6月20日、国と森友学園の間で、代金1億3,400万円とする売買契約が締結されています。

 

ここまでの詳細な内容を把握しながら、森友学園問題をテレビのニュースで見たり、新聞の記事で読んでいた読者の方は少ないのではないでしょうか?

実は私も今回のインターネットリサーチにおいて、知った事実が多くありました。

 

土地に関する経緯を年表ごとに整理

 

上述の土地に関する経緯を、シンプルに年表ごとに整理してみました。

まずは、入手した情報を整理したり、分類したりしてこの記事で書きたいことを明確にしていこうと考えています。

最後まで読んで頂いた読者の方に「なるほど。」と思って頂く為に頑張ります。

 

1974年住民から土地を順次買収し、土地の所有者は大阪航空局。

2009大阪航空局が試掘調査を実施ゴミが発見される

2011約7億円の土地の売買交渉が成立していない。入札価格が鑑定価格約9億円。

~2012年砒素・鉛の汚染土壌、コンクリートガラなどの地中埋設物が確認される

2013年6月国から土地売却の公募が出される。

2013年9月森友学園から財務省近畿財務局に対し土地の取得要望書が提出され、賃貸借契約締結に向けた交渉が開始。

2015年5月29日学園と国との間で売買契約ではなく10年間の定期借地契約が締結。

森友学園が土壌改良及び地中のごみ撤去工事を実施

2016年3月1日森友学園から新たにゴミが発見されたと報告があり、ゴミ撤去要請がなされる

2016年3月24日学園代理人弁護士から土地売買契約の申込がされる。

国土交通省大阪航空局から近畿財務局に対し、予算確保が難しいことから、ゴミ撤去費用を土地代金から値引きして売買契約を締結する提案がされる。

2016年3月30日買い主側(学園)から見積の提示ないし撤去工事がなされる通常の手続きから外れる異例の手続きがとられ、近畿財務局から大阪航空局に対し、ゴミ撤去費用の見積り要請がされる。

2016年4月6日大阪航空局から学園に対し、既成分ゴミ撤去工事費用等として1億3,176万円が支払われています。

2016 年4月14日大阪航空局から近畿財務局に対し、新たなゴミ撤去費用が約8億2,000万円と報告される。

2016年6月20日国と学園の間で、代金1億3,400万円とする売買契約が締結される。

 

ここから環境デューデリジェンス(環境DD)の観点でこの年表を整理して、内容の詳細をリサーチしていきます。

 

環境デューデリジェンス(環境DD)視点の土地の経緯(土壌汚染や地中埋設物の発見について)- 1974年 -

 

年表を土壌汚染や地中埋設物を発見する為の調査という観点で整理すると以下の年度が気になりました。

 

1974年住民から土地を順次買収し、土地の所有者は大阪航空局。

 

2009大阪航空局が試掘調査を実施。ゴミが発見される

 

~2012年砒素・鉛の汚染土壌、コンクリートガラなどの地中埋設物が確認される

 

2015年5月29日森友学園と国との間で売買契約ではなく10年間の定期借地契約が締結。森友学園が土壌改良及び地中のごみ撤去工事を実施

 

2016年3月1日森友学園から新たにゴミが発見されたと報告があり、ゴミ撤去要請がなされる

 

まずは、1974年に関して書いていきます。

 

この年の状況では、土地の売り手側が住民で買い手側が大阪航空局ということになります。

1974年には土壌汚染対策法も土壌環境基準も日本には存在しません。

しかし、一方で公害問題は既に日本も問題になっており、地下水環境基準も施行されています。

したがって、何かしらの環境に関する調査がなされていると私は考えていました。

 

 

環境に関する調査、すなわち環境デューデリジェンスがこの1974年に実施されていたかの有無を書く前に、まず1974年当時の土地を空中写真で確認してみることにしました。

赤い枠が森友学園の例の土地です。

 

森友学園問題の土壌汚染と地中埋設物問題を環境デューデリジェンス

 

この1974年の空中写真では把握しづらいのですが、この土地に存在しているのは建設物(宅地に建設された集合住宅)です。

1975年のカラー空中写真では、はっきりと集合住宅の建物の存在が確認できます。飛行中の飛行機もはっきりと確認できます。

 

森友学園問題の土壌汚染と地中埋設物問題を環境デューデリジェンス

 

 

いずれにせよ、対象地には構造物が存在していたことになりますが、製造業などの工場ではなかったということです。

 

そして、ここからが当時の環境デューデリジェンスの実施の有無に関する本題です。

 

2009年7月に大阪航空局が実施した「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)土地履歴等調査」の報告書等によると、以下の記載(一部抜粋)があります。

 

上記土地の買入れについて、大阪航空局は、国有財産法、「国土交通大臣の設置する特定飛行場周辺の移転補償等実施要領」等に基づき実施していたとしている。

移転補償実施要領によれば、地方航空局長は、土地の買入れなどを希望している土地所有者から、土地買入れ等申請書等の提出があり、これを受理したときは、当該土地の現況を確認した上、土地調書、土地境界確認書等を作成し、所有権等の権利関係、面積、土地境界等を確認することとされており、これらを基に土地買入金等の額を算定することとされている。

大阪航空局は、引渡しを受ける土地における地下埋設物等の調査については、①移転補償実施要領等において、土地買入金等の額の算定に係る地下埋設物に関する規定は特にないこと、②移転補償跡地は、大阪航空局が原則として更地のまま管理することとしており、また、特定の利用用途を定めていないなど、地下埋設物があっても特にその後の管理に影響を及ぼさないことなどの理由により、行っていなかったとしている。

 

つまり、土地の買い手側の大阪航空局は土地を住民から購入する1974年に環境デューデリジェンス(環境DD)を実施していないことになります

 

おそらくは、住民との協議の上、日本特有の「義理人情のなあなあ文化」が本領を発揮したと思われます。

 

この段階で買い手側による環境デューデリジェンス(環境DD)が実施されていれば、この土地のその後の環境に関する状況にプラスの変化があったかもしれないという可能性は否定できません。

 

環境デューデリジェンス(環境DD)視点の土地の経緯(土壌汚染や地中埋設物の発見について)- 2009年 -

 

次は、2009年の試掘調査の実施です。

大阪航空局は、2009年に対象地に関して、土地履歴等調査及び地下構造物調査を実施しています。主な目的は、換地後の土地における瑕疵等を明らかにすることです。

 

換地後の土地と記載していますが、当該土地周辺は野田区画整理事業において、野田地区内において大阪航空局が所有していた土地で換地が行われていました。

この野田区画整理事業における換地における時点にでも、土地の評価に関しては、土地の形状、接道状況等に応じて評価することとなっており、土地に係る地下埋設物に関する評価の規定は定められていませんでした。

 

つまり、この時点においても適切な環境デューデリジェンス(環境DD)は実施されていません

 

 

話を2009年に戻します。

大阪航空局は、換地後の土地に有害物質である重金属や揮発性有機化合物に汚染された土壌が存在するおそれの有無を評価することなどを目的として、2009年7月に土地履歴等調査を調査会社へ発注して実施しています

 

請負業者から大阪航空局に提出された報告書によれば、換地後の土地には、①土壌汚染の原因となる有害物質を取り扱う可能性のある企業の立地は確認されなかったこと②周囲がフェンスで囲われ、施錠されていて不法投棄等は確認されなかったことなどから、汚染された土壌が存在するおそれはないと評価されています。

 

このため、更に詳細な調査は実施されていません。

 

この土地に関しては、2009年7月に初めて土地を環境の観点で評価する為に環境デューデリジェンス(フェーズ1調査)が実施されたことになります

そして、その結果が汚染された土壌が存在するおそれはないという評価でした。

 

 

同時期に地下構造物調査が実施されています。

2009年7月の土地履歴等調査では、周囲がフェンスで囲われ、施錠されていて不法投棄等は確認されなかったとの結果になっていますが、環境デューデリジェンスの観点では、実際に現地においてその状況を確認するということは非常に有効です。

したがって、同時期の地下構造物調査の実施は非常に有効であり適切でもあると言えます。

 

 

地下構造物調査の詳細は以下のとおりです。

大阪航空局は、換地後の土地の地下埋設物の状況把握を目的として、2009年10月に「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務」を調査会社へ発注して実施しています。

本件業務の特記仕様書では地下構造物調査は、上下水道、ガス管等の施設状況資料を市役所、水道局、ガス会社等から入手可能な範囲で収集しなければならないと記載されていました。

また、現地踏査により、地表面の状況や構造物等を把握し、整理するとともに、地中レーダ探査、試掘等により地下埋設物の状況を調査することとされており、レーダ探査の深度は3m以内、試掘深度は、原則として地山深度(地下埋設物がなくなる深度)とされていました。

 

請負業者から大阪航空局に提出された報告書によれば、試掘した深度はおおむね3mとされており、換地後の土地のうち西側の本件土地では、地下構造物等のほかに、廃材、廃プラスチック、陶器片、生活用品等のごみ(廃材等」や「廃棄物混合土」)が、平均して深度1.5mから3.0mまでの層において確認されていると報告されています。

また、土間コンクリートや基礎コンクリートが一部において確認されており、コンクリート殻は全域にわたって確認され、深度数10cmから1.5m程度までの層において点在しているとされているとも報告されています。

そして、隣接する公園用地においても、本件土地と同様の地下埋設物が確認されていると報告されています。

 

試掘調査の結果は、フェーズ1調査で見抜けなかった点を特定できた為、結果的に良い調査だったといえます。

ただ、このタイミングにおいて環境デューデリジェンスの視点で注視すべき点は、地下構造物等のほかに、廃材、廃プラスチック、陶器片、生活用品等のごみ(廃材等」や「廃棄物混合土」)が、平均して深度1.5mから3.0mまでの層において確認されているという結果に基づく追加調査が実施されたのかという点です。

 

私の経験上、この点は非常に重要な点であると考えられます。

 

追加調査に関して、結論を書きますとこのタイミングでの追加調査の実施の情報をインターネットリサーチでは確認することができませんでした。

おそらく、このタイミングでの追加調査の実施はなかったと判断できます。

 

環境デューデリジェンス(環境DD)視点の土地の経緯(土壌汚染や地中埋設物の発見について)- 森友学園の土地に隣接する公園用地 -

 

もう一点、隣接する公園用地に関して記載しておきます。

この隣接する公園に関しては、試掘調査を実施した請負業者から大阪航空局に提出された報告書の中で隣接する公園用地においても、本件土地と同様の地下埋設物が確認されていると報告している公園です。

 

対象地に隣接する公園は、近畿財務局が2010年3月10日に、地下構造物調査の報告書に記載されている地下埋設物が存在することを買受人である豊中市が了承したとする特約条項を付して瑕疵を明示した国有財産売買契約により、公園用地9,492.42m2を豊中市に14億2,386万余円で売却しています。

 

この売却に関しては、2007年度の土地履歴等調査結果や地下構造物調査の結果が、seller’s EDDとしての結果となり、買い手側である豊中市に開示されていると考えられています。

しかし、一方で豊中市は買収時に詳細な環境デューデリジェンスを実施していないということになります

 

おそらくは売り手側から開示された資料のレビューのみを実施したという程度でしょうか。

この点から学べることは、買い手側が環境デューデリジェンスが実施できるのなら徹底的に実施すべきだということですね。

 

なぜ、実施すべきタイミングで適切な環境デューデリジェンスを可能な範囲で徹底的に実施すべきなのか?

 

答え合わせは以下のとおりです。

豊中市は大阪航空局が2009年7月に実施した土地履歴等調査において、公園用地を含む換地後の土地において土壌汚染のおそれはないと評価されていたものの、売買契約書に、公園用地に廃棄物混合土を含む地下埋設物等があることが明示されていたことなどから、公園整備に先立ち、2010年11月に調査会社へ発注して公園用地における土壌汚染等の調査を実施しています。

 

なぜ、このタイミングで土壌汚染調査を実施したのかという疑問は残りますね。

おそらく売買取引の契約事項で制限があったのではないかと私は推測しています。

 

そして、調査の結果、土壌汚染が確認されたため、豊中市は確認された土壌汚染は国有財産売買契約書第7条に定める隠れた瑕疵に当たるとして、2011年3月23日に近畿財務局に土壌汚染対策により増額した費用負担について、協議申入れの事前通知を行っています。

 

結果的に公園整備後の2015年3月4日に、豊中市は、土壌汚染対策費用23,282,700円の負担について、近畿財務局及び大阪航空局に協議の申入れを行っており、協議の結果、2015年3月13日に近畿財務局、豊中市及び大阪航空局は、公園用地に係る瑕疵担保の処理についての合意に基づく合意書を締結し、この合意書に基づき、大阪航空局は2015年3月26日に、賠償金として23,282,700円を豊中市へ支払っています。

 

2010年に買収した公園用地に対して、2015年まで土壌汚染問題が長引いたことになります。そして、賠償金等が発生し、多くの人のエネルギーがこの問題に対して費やされたことでしょう。

もし仮に、2010年の買収前に適切な環境デューデリジェンスが実施されていれば、こんな結果にはならなかったはずです。

この問題の全てが、環境デューデリジェンスを実施していればその場で解決したということはないと思いますが、行政間の関係性や費用などの影響度合いに関しては何かしら軽減されていたと考えられます。

 

環境デューデリジェンス(環境DD)視点の土地の経緯(土壌汚染や地中埋設物の発見について)- 2010年 -

 

話を森友学園の例の土地へ戻します。

豊中市が公園整備に先立ち、2010年11月に調査会社へ発注した汚染等の調査の結果において、土壌汚染の存在が発覚したことから、大阪航空局は対象となる土地についても、土壌汚染に係る調査を実施することとし、土壌汚染の有無とその範囲を把握及び判定することを目的として、2011年9月20日に「大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染概況調査業務」(以下「土壌汚染調査」という。)を調査会社へ発注して実施しています。

 

この時点での調査は、特に環境デューデリジェンスを目的としたものではありません。過去に同じように管理されていた隣接する土地で土壌汚染が発覚したからだと想定されます。

 

調査方法は土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)等に基づき、東西方向及び南北方向に10m間隔で引いた線により格子状に対象地を区画するなどした上で、土壌ガス及び表層土壌(表層から50cmまで)の採取、採取した試料の分析等を実施されています

 

提出された報告書によれば、60か所を調査した結果、2か所において砒素及びその化合物の溶出量基準に不適合3か所において鉛及びその化合物の含有量基準に不適合、計5か所において土壌汚染が特定されています

 

不適合となった5か所について、深度方向の汚染範囲を特定する必要があることから、大阪航空局は、土壌汚染除去等の対策が必要となる平面範囲と深さを確定し、対策工法等を考察することを目的として、2011年12月27日に「大阪国際空港場外用地(OA301)土壌汚染深度方向調査業務」(以下、土壌汚染調査と合わせて「土壌汚染調査等」という。)を調査会社へ発注して実施しています。

本深度方向調査では、現地調査における土壌試料の採取はボーリングによることとされており、最大地下10mまでを原則としています。

 

提出された報告書によれば、基準に不適合な5か所において、汚染深さが地下1mから3mまでの層にあるとし、その除去の方法については、対象土量が比較的少ないことから掘削による除去が適しているとされています。

 

また、大阪航空局は、土壌汚染調査等の結果を受けて、本件土地の砒素及び鉛による汚染状況が土壌汚染対策法施行規則(平成14年環境省令第29号)等で定める基準に適合しないとして、土壌汚染対策法等に基づき、2013年4月9日に豊中市に対して形質変更時要届出区域の指定の申請を行い、同月26日に同区域の指定を受けています

 

土壌汚染対策法をベースとして環境デューデリジェンス(環境DD)にも限界があるということが理解できました。やはり、プロフェッショナルな判断が環境デューデリジェンス(環境DD)には必要だということです。

土壌汚染対策法に準拠した調査方法でもカバーしきれいない汚染のおそれの特定が、国内での適切な環境デューデリジェンスが実施されたか否かの重要な評価の指標になりそうですね。

 

環境デューデリジェンス(環境DD)視点の土地の経緯(土壌汚染や地中埋設物の発見について)- 2014年 -

 

その後、2013年6月に国から対象地の土地売却の公募が出されます。

2013年9月に森友学園から財務省近畿財務局に対し土地の取得要望書が提出され、賃貸借契約締結に向けた交渉が開始されます。

森友学園は、本件土地の取得に先立ち、小学校建設に係る本件土地の地盤調査を実施するため、2014年10月21日から30日にかけて、本件土地の地層構成を明らかにし小学校校舎等の設計・施工の基礎資料とすることを目的として、地盤調査を調査会社へ発注して実施しています。

 

当該地盤調査に係る報告書によれば、ボーリング調査は2か所で実施され、それぞれ地下46.5m、21.5mの深さまで実施されています。

 

ボーリング調査の結果、地下3.1mまでは盛土層であり、盛土層について、その上部では植物根が多く混入し、中部から下部では塩化ビニル片、木片及びビニル片等が多く混入しているとされており、地下3.1m以深については、地下約10mまでが沖積層、それ以深が洪積層であるとされています。

 

しかし、賃貸借契約であっても土地を取得する側である森友学園もこの時点で汚染が存在するとされている対象地に対して詳細は環境デュージェンスは実施していません

 

この地盤調査は地盤の強度を把握する為の調査であり、土壌汚染等を特定したり、その規模などを含む環境面のリスクを評価する調査ではありません。

つまり、売り手側に該当する大阪航空局が過去に実施した報告書のレビューのみと考えられます。

 

環境デューデリジェンス(環境DD)視点の土地の経緯(土壌汚染や地中埋設物の発見について)- その後、2015年 -

 

2015年5月29日に本件土地の貸付けを受けた森友学園は、(仮称)森友学園小学校新築工事に伴う土壌改良他工事及び(仮称)森友学園小学校新築工事に伴う敷地南側地中埋設物撤去工事を2015年6月30日から12月15日までの間に実施しています。

 

既に森友学園が対象地の貸付けを受ているので、私は環境デューデリジェンスという観点でこの土地の経緯等に関するリサーチを止める事にしました。

 

もちろん、森友学園と近畿財務局及び大阪航空局との間に当該対策工事で対象とされた土壌汚染や地中埋設物の撤去に関しては、どちらが費用を負担するかという契約があったと考えるのが当然です。

実際、大阪航空局から森友学園へ処分費用が支払われています。

 

実施すべきであった環境デューデリジェンス(環境DD)のタイミング

 

環境デューデリジェンス(環境DD)視点で土地の経緯を調べていると、このタイミングで買い手側なり売り手側が適切な環境デューデリジェンスを実施すべきでは?という点が多々あります。

 

あくまでも私の個人的な考えなのですが、このタイミングを整理してみようと思います。

 

1974年に大阪航空局は土地を住民から購入するタイミング

このタイミングでは住民にSeller’s EDDを期待するのは酷なので買い手側の大阪航空局が環境デューデリジェンスを実施すべきだったと思います。

 

2009年に換地後の土地における瑕疵等を明らかにするタイミング

このタイミングでは、土地履歴等調査や地下構造物調査が実施されています。調査の結果、土壌汚染の原因となる有害物質を取り扱う可能性のある企業の立地は確認されなかったこと、周囲がフェンスで囲われ、施錠されていて不法投棄等は確認されなかったことなどから、汚染された土壌が存在するおそれはないと評価されていますが、ベースラインフェーズ2調査は実施しても良いタイミングだったと考えられます。

過去において、直接的に土壌汚染の有無を確認する調査が実施されていないという点でもベースラインフェーズ2調査が必要であるという根拠にもなります。

また、同時期に実施された地下構造物調査においても、調査計画の範囲が3mまでで実際に廃材、廃プラスチック、陶器片、生活用品等のごみ(廃材等」や「廃棄物混合土」)が、平均して深度5mから3mまでの層において確認されているとの報告があることから、3mより深い深度で追加の調査を実施すべきだったと考えられます。

 

近畿財務局が対象地に隣接する公園を豊中市へ売却するタイミング

基本的に近畿財務局がSeller’s EDDを実施している形になっていますが、買い手側である豊中市が土地の買収前に適切な環境デューデリジェンスを実施しておくべきだったと考えられます。

豊中市が土壌調査を実施したのは、契約後から8ヵ月後です。そして、土壌汚染が発覚しています。

 

豊中市の土壌汚染調査より大阪航空局が土壌汚染調査を実施したタイミング

豊中市が公園整備に先立ち、2010年11月に調査会社へ発注した汚染等の調査の結果において、土壌汚染の存在が発覚したことから大阪航空局は対象となる土地についても、土壌汚染に係る調査を実施していますが、本調査は土壌汚染対策法に準拠して実施されています。

これまでの経緯を考慮すると、もっと多様なアプローチで将来を見据えたSeller’s EDDを実施しておくべきだったと考えます。

土壌汚染対策法ではあくまでも工場等での漏洩に起因した土壌汚染を特定するための調査方法となっています。

したがって、対象となる土地の条件によっては、調査方法がマッチしない可能性があります。

 

2013年6月に国から対象地の土地売却の公募が出されるタイミング

適切なSeller’s EDDを実施しておくべきだったと考えます。

 

森友学園と財務省近畿財務局が賃貸借契約締結に向けた交渉を実施するタイミング

買い手側及び売り手側が適切な環境デューデリジェンスを実施しておくべきだったと考えられます。

 

少なくとも6つのタイミングがあったと私は考えています。

 

環境デューデリジェンスは地面の下が対象であり、一般的には目に見えず日本特有の「義理人情のなあなあ文化」で検討されないことが多いです。

しかし、一方で表舞台でスポットが当たるとそのインパクトは想像を超えて大きくなり可能性が十分にあります。

 

まさに、この森本学園問題の始まりは土壌汚染問題だったと思います。

結果的には政治家にスポットが当たりましたが…..。

 

たかが地面の下の汚染ですが、地表面にあれば人の健康や自然環境に大きな影響を与える要素になります。

 

つまり、私が何を言いたいかというと環境デューデリジェンス(環境DD)は土地の取引や企業買収のM&Aではとても重要だということです

 

最後に…

 

次回は、この森本学園問題の経緯を環境デューデリジェンスを実施すべきタイミングではなく、環境負債(Environmental Liability)評価の観点でレビューして書いてみようと考えています。

 

ちなみに環境デューデリジェンスって何?となった読者の方は以下の記事を参照ください。

 

環境デューデリジェンスとは?環境デューデリジェンス(環境DD)とは? 突然ですが、読者のみなさん(あなた)に質問です。 デューデリジェンスっ...

 

この環境デューデリジェンスの専門サイトは、M&A係る人又は今後M&Aに係ってみたい人に環境デューデリジェンスに関する知識や情報をを少しでも多く知ってもらう為の普及活動をしているサイトです。

 

最後まで読んで頂き有難う御座いました。

こんな記事もおすすめ