土壌地下水汚染の基準

ダイオキシン類に係る土壌汚染の基準

ダイオキシン類に係る土壌汚染の基準

 

土壌汚染調査や環境デューデリジェンス調査を実施する際に考慮すべき、主な調査項目は以下のとおりです。

 

 

土壌汚染対策法で定められている特定有害物質はもちろんのこと、ダイオキシンも重要な物質の一つです。

 

ダイオキシンは、正式にはダイオキシン類と言います。

ダイオキシン類は単一の物質ではなく、以下の物質の総称のことです。

 

・ポリ塩化ジベンゾフラン

・ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン

・コプラナーポリ塩化ビフェニル

 

ダイオキシン類は、廃棄物の焼却、塩素によるパルプなどの漂白、または農薬などの化学物質を製造する際の副生成物として非意図的に生成することが知られています。

 

世間的には廃棄物の焼却より発生する悪い影響を及ぼす物質というイメージでしょうか?

 

ダイオキシン類は、難分解性の物質であるため、環境に放出されると土壌や水環境中に長期間残留します。さらに食物連鎖を通して生物濃縮され、生体に影響を及ぼすと言われています。

そんなダイオキシン類に係る土壌汚染の基準は、ダイオキシン類対策特別措置法に基づいて定められています。

 

ダイオキシン類対策特別措置法に基づくダイオキシン類に係る土壌汚染の基準は以下のとおりです。

 

 

土壌汚染の進行防止等の観点からモニタリングや調査を行う基準としての調査指標値を250pg-TEQ/gに設定。

汚染土壌の対策要件は、一般国民の居住・活動の場について1,000pg-TEQ/gを採用。

 

 

つまり、土壌汚染調査や環境デューデリジェンス調査を実施する際に考慮すべきダイオキシン類に係る土壌汚染の基準は、1,000pg-TEQ/gです。

 

ダイオキシン類土壌環境基準については、土地利用の用途によらず、すべての土壌に適用されますが、廃棄物の埋立地、廃止後の廃棄物の埋立地等であって一般国民の直接的な曝露及び土壌中のダイオキシン類の水域への移行に対する配慮がなされることにより、外部から適切に区別されている施設に係る土壌については適用できません

 

 

1,000pg-TEQ/gはダイオキシン類に係る土壌環境基準です。

つまり、土壌の汚染に係る環境上の条件につき人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準です。

そして、土壌汚染対策法のように土壌から地下水へ移行したダイオキシン類を地下水の飲用により摂取するリスクを考慮した土壌溶出量調査は定められていません。

 

 

ちなみに他のダイオキシン類に関する環境基準は以下のとおりです。

 

大気年間平均値 0.6pg-TEQ/m3以下

水質年間平均値 1pg-TEQ/l以下

底質 150pg-TEQ/g以下

 

ただし、以下の点にご留意下さい。

■ダイオキシン類の大気の汚染に係る環境基準は、工業専用地域、車道その他一般公衆が通常生活していない地域又は場所については適用できません。

 

■ダイオキシン類の水質の汚濁に係る環境基準は、公共用水域及び地下水について適用できます。

 

ダイオキシン類対策特別措置法とダイオキシン類の土壌汚染対策に関する詳細を以下に記述しています。

 

 

ダイオキシン類対策特別措置法とダイオキシン類に係る土壌汚染対策に関するマニュアル等

 

ダイオキシン類対策特別措置法は、ダイオキシン類が人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある物質であることにかんがみ、ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びその除去等をするため、ダイオキシン類に関する施策の基本とすべき基準を定めるとともに、必要な規制、汚染土壌に係る措置等を定めることにより、国民の健康の保護を図ることを目的として施行されています。

 

ダイオキシン類に係る土壌汚染対策は、環境省が公表している以下のマニュアル等で管理されています。

 

ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル

👆 試料の採取方法や分析方法が記載されています。

 

ダイオキシン類基準不適合土壌の処理に関するガイドライン

👆 ダイオキシン類基準不適合土壌処理施設の種類やダイオキシン類基準不適合土壌処理施設における維持管理等が記載されています。

 

 

そして、令和になり、以下の手引が環境省により公表されています。

 

工場・事業場におけるダイオキシン類に係る土壌汚染対策の手引き

👆 土壌汚染対策法の考え方を取り入れ、工場又は事業場の土地や過去に工場又は事業場であった土地においてダイオキシン類による土壌汚染対策を行う際に参考となる資料です。

上記の2つのマニュアルとは異なり、自主的なダイオキシン類の土壌汚染調査の実施を推奨する意義ダイオキシン類による土壌汚染対策を実施する契機調査の流れが記載されています。

 

 

ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル

 

ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアルは、土壌中のダイオキシン類について調査測定を実施する場合の調査の進め方と試料採取及び分析の技術的手法が整理されたものです。

 

 

ダイオキシン類の係る土壌調査の分類

 

ダイオキシン類の係る土壌調査として、以下の分類がされています。

 

地域概況調査:土壌中のダイオキシン類の概況を把握するために実施する調査です。

地域概況調査は以下の調査に分類されます。

 

🔶 一般環境把握調査

一般環境における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため、特定の発生源の影響をあらかじめ想定せずに実施する調査。

 

🔶 発生源周辺状況把握調査

ダイオキシン類を発生し排出する施設が、一般環境の土壌に及ぼす影響を把握するため、発生源の周辺において実施する調査。

 

🔶 対象地状況把握調査

既存資料等の調査によりダイオキシン類による汚染のおそれが示唆される対象地における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため、実施する調査。

 

調査指標確認調査:地域概況調査の結果、250pg-TEQ/g(調査指標値)以上の地点が判明した場合、その周辺における土壌中のダイオキシン類濃度を把握するため実施する調査。

 

範囲確定調査:地域概況調査又は調査指標確認調査の結果、土壌の環境基準を超える地点が判明した場合、環境基準を超える土壌の範囲及び深度を確定するため実施する調査。

 

対策効果確認調査:汚染の除去等の対策を実施した場合、その効果を確認するため実施する調査。

 

継続モニタリング調査:調査指標値以上の地点について、土壌中のダイオキシン類濃度の推移を把握するため、3~5 年の期間をおいた後に実施する調査。

 

つまり、ダイオキシン類に係る土壌の調査では、まず土壌中のダイオキシン類の概況を地域概況調査により把握することになります。

地域概況調査は、調査の目的に応じて、一般環境把握調査、発生源周辺状況把握調査及び対象地状況把握調査に分類されます。

いずれの場合も、あらかじめ、土地利用状況等を資料等により調査したうえで土壌の調査地点を選定することになります。

具体的に土壌の調査地点が選定されれば、試料を採取し、分析を行うことにより、土壌中のダイオキシン類の測定を行います。

そして、地域概況調査の結果を環境基準に照らして評価し、その結果に応じてさらに調査指標確認調査や範囲確定調査を実施することになります。

 

 

ダイオキシン類に係る土壌汚染対策の試料採取方法

 

そして、このマニュアルで注目すべき記載は、試料採取方法です。

ダイオキシン類に関する土壌試料採取は土壌汚染対策法の土壌試料採取と異なります。

 

土壌試料の採取は、調査地点において、原則として、表層 5cm の土壌について 5 地点混合方式で行います。

 

ただし、範囲確定調査で深度範囲の確定を行う場合には 1 地点の柱状試料を採取します。

 

具体的には以下のとおりです。

 

🔳 試料の採取に当たっては、既存資料等の調査により土地の履歴が明らかな場所を選定します。

 

🔳 試料の採取に当たっては、10~20m 四方程度の裸地で、落ち葉等で覆われていない場所を選定します。

表層に落ち葉等の被覆物がある場合には、それらを除去します。やむを得ず草地等で採取する場合には、植物体の地上部を鎌等で刈り取り、除去した後、土壌を根茎を含んだ状態で採取する必要があります。

 

🔳 原則として、5 地点混合方式により試料採取を行います。

調査地点 1 地点につき、中心及び周辺の 4 方位の 5~10m までの間からそれぞれ1箇所ずつ、合計 5 箇所(地点)で試料を採取し、これを等量混合します。

調査地点の状況により、5 地点混合方式の間隔が十分にとれない場合は、間隔を小さくして 5 箇所(地点)から採取するか、または、中心及び 4 方位以外で、調査地点の代表性が確保できる 5 地点を設定し、試料を採取しても問題ありません。

 

🔳 試料採取深度は、地域概況調査については、地表面から 5 ㎝までの部分を採取します。

農用地等人為的な攪拌を伴う土地において調査する場合の試料採取深度は地表面から 30㎝までの部分を採取します。

 

🔳 試料採取は、原則として直径 5 ㎝程度、長さ 5 ㎝以上の柱状試料を採取し、そのうち上部(地表面)より 5 ㎝までの部分を試料として採取します。

農用地等、人為的な攪拌のある土壌については、同様に上部より 30 ㎝までの部分を採取します。

その際、試料採取量は分析試料として必要な量、すなわち乾重で 100g 程度確保します。長さ 5㎝、直径 5 ㎝以上の柱状試料を採取すると、試料採取量は概ね150g 以上です。

砂質土壌等で柱状の採取ができない場合は、シャベル、スコップ等を用いて、所定の深さの土壌を採取します。

採取に使用する採土用具は金属製のものとし、採取に当たっては、ダイオキシン類の他試料からの汚染を防ぐため、他地点の採取時に付着した土壌等を完全に除去します。

 

🔳 採取した土壌は、ステンレス製等でダイオキシン類が吸着しにくく、密封が可能で遮光性がある容器注に収めます。

分析は試料採取後直ちに行う必要があります。

分析を直ちに行えない場合には、冷暗所(4℃程度)に保存し、できるだけ速やかに分析を行う必要があります。

分析に用いた試料(等量混合したもの)の残りを長期保存する場合は冷凍保存(-5℃以下)することが重要です。

 

🔳 採取した土壌の状況は、現地で土性の判定を行い、記録します。

土性については、野外土性の判定方法を参照し行います。また、土色についても、肉眼またはマンセル表色系等を用いて判定、記録します。

 

🔳 試料採取時の記録として、少なくとも下記の情報を記録し、整理・保管することが重要です。

① 試料採取に使用した器具の種類及び状況
② 採取地点付近の建築物や立ち木等の有無と位置、日照等の周辺状況
③ 採取地点上の枯れ葉等の被覆物の有無
④ 採取方法、採取地点間の距離
⑤ 採取試料の性状(土性・土色等)

 

上述の調査方法を図に整理すると以下のとおりです。

 

ダイオキシン類対に係る土壌調査測定マニュアル

 

 

工場・事業場におけるダイオキシン類に係る土壌汚染対策の手引き

 

工場・事業場におけるダイオキシン類に係る土壌汚染対策の手引きは、ダイオキシン類対策特別措置法の第2条第2項に定める特定施設を設置している事業者やその土地の所有者、過去に同施設を設置していた土地の所有者等が、自主的にダイオキシン類に係る土壌汚染対策に取り組む際や、事業者等からダイオキシン類による土壌汚染の相談を受けた自治体が対応を検討する際の参考となるよう、有識者や自治体担当者により組織された検討会で検討を行い、調査・措置の考え方や留意事項をとりまとめた手引です。

 

 

自主的な土壌汚染対策を行うことの意義

 

ダイオキシン類の土壌汚染に関して心当たりがある民間企業が自主的な土壌汚染対策を行うことの意義は以下のとおりです。

 

🔶 従業員や周辺住民の健康被害の発生の防止

 

🔶 土地の形質の変更や汚染された土壌の搬出による汚染の拡散の防止

 

🔶 計画的な土壌汚染対策の実施による対策費用の低減、工期の遅れの回避

 

🔶 円滑な土地取引の実施

 

自主的な調査で土壌汚染が確認された場合、必要に応じて公表や自治体への報告を行い、適切に対応を行うことが重要です。

 

 

ダイオキシン類に係る土壌汚染対策を実施する契機

 

ダイオキシン類による土壌汚染のおそれがある土地では、次のような契機を捉えて実施することが考えられます。

 

🔷 特定施設を廃止したとき

 

🔷 ダイオキシン類を含む固体、液体の飛散、漏洩等のおそれがある事故が発生したとき

 

🔷 特定施設を設置している土地又は過去に特定施設やその他のダイオキシン類を発生させるおそれのある施設が存在していた土地、廃棄物等が埋設されている土地等で土地の形質の変更を行うとき

 

🔷 PCBによる土壌汚染が確認されたとき

 

 

ダイオキシン類による土壌汚染の調査方法

 

資料等調査を行い、調査対象地のダイオキシン類による土壌汚染のおそれの有無等を把握し、おそれがある場合は、試料採取計画を作成し、試料の採取、測定を行います。

試料採取地点の設定は、土壌汚染対策法の方法を参考として、設定することが考えられますが、ダイオキシン類の測定は一般に土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の測定に比べて費用が高額であることを踏まえ、まずは「汚染のおそれが比較的多いと認められる土地」を含む単位区画で試料採取等を行い、土壌環境基準不適合の土壌が存在することが確認された場合に、「汚染のおそれが少ないと認められる土地」を含む単位区画で試料採取等を行い、汚染の範囲を確認することが考えられます。

ダイオキシン類による「汚染のおそれが比較的多いと認められる土地」としては、特定施設が設置されている場所ダイオキシン類を含む固体又は液体を取り扱っていた場所ダイオキシン類を含む廃水等が流れていた配管付近ダイオキシン類を含む廃棄物の埋設場所等が考えられます。

 

資料等調査 → 試料採取計画の作成 → 試料採取 → 調査結果の整理の流れは以下の図のとおりです。

 

工場・事業場におけるダイオキシン類に係る土壌汚染対策の手引き

 

 

試料採取地点の設定方法は、土壌汚染対策法の方法を参考とし、設定することが考えられます。

しかし、少し変則的で土壌環境基準不適合土壌が存在する可能性が高いと考えられる「汚染のおそれが比較的多いと認められる土地」を含む単位区画で試料採取等を行い、土壌環境基準不適合の土壌が存在することが確認された場合に、基準不適合が確認された地点の周囲の「汚染のおそれが少ないと認められる土地を含む単位区画」で試料採取等を行い、汚染の範囲を確認することが望ましいです。

 

ダイオキシン類の土壌調査の地点設定

 

 

試料採取の深さは、原則として汚染のおそれが生じた深さから5cmの土壌を採取するこ
とが考えられます。

地上部で汚染のおそれが生じた場合は、地表から5cmの土壌を採取し、地下配管や廃棄物の埋設等により地下で汚染のおそれが生じた場合は、地下配管や廃棄物の底面の深さから5cmの土壌を採取します。

ダイオキシン類に係る条例等を定めている自治体内で条例等に基づく調査を行う際は、上記の方法にかかわらず条例等に定められた方法に基づき試料採取計画を作成する必要があります。

また、条例等に定められた調査契機に該当せず、自主的に調査を行う場合においても適宜自治体と相談した上で、試料採取計画を作成することが望ましいです。

 

試料採取及び採取した試料の測定は、調査測定マニュアルに基づいて実施することが考え
られます。

ただし、調査測定マニュアルでは、5地点混合で試料採取を行うこととしているため、試料採取を1地点で行う際は、測定に必要な試料の量を確保するよう注意が必要です。

 

 

汚染の除去等の措置及び汚染土壌の処理

 

ダイオキシン類による土壌汚染が確認された場合の措置としては、汚染土壌の掘削除去や原位置での浄化(分解、抽出)、原位置での封じ込め、覆土、植栽、舗装等が考えられます。

汚染の除去等の措置及び汚染土壌の処理については、基本的に土壌汚染対策法ガイドラインを参照します。

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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