平成31年 改正土壌汚染対策法

【曖昧な理解ではダメ!】土壌汚染対策法の要措置区域とは?その1

土壌汚染対策法の要措置区域の解説 - 要措置区域の指定に係る要件偏 –

 

土壌汚染対策法や土壌汚染調査技術管理者試験の過去問題に目を通していると要措置区域という単語が出てきます。

 

要措置区域という単語を分解してみると、措置する区域と理解できます。

 

私の経験上、ざっくり言うと、土壌汚染対策で定められている土壌溶出量基準又は土壌含有量基準を超過した汚染土壌が存在し、人の健康に影響を与える(又は可能性がある)土地ということです。

ちなみに土壌汚染対策法のガイドラインでは以下のように私の上述の文章を表現しています。

 

基準に適合しない汚染状態になる土地については、当該汚染により人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがある場合には要措置区域に、当該汚染により人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあるとは言えない場合には形質変更時要届出区域に、それぞれ区分して指定することとしている。

 

ちなみに、指定するのは都道府県知事です。

もちろん指定されるということは、解除されることもあります。

 

要措置区域の指定に係る要件

要措置区域の指定

 

要措置区域を説明するにあたり、以下の2つ視点で整理していきます。

以下の2つの視点が要措置区域の指定に係る要件ということです。

 

◆  汚染状況に関する基準

◆  健康被害が生ずるおそれに関する基準

 

まずは、「汚染状況に関する基準」からです。

 

汚染状況に関する基準

 

土壌汚染対策法のガイドラインでは以下と同様の文章が記載されています。

 

要措置区域の指定基準のうち、汚染状態に関する基準として、土壌溶出量基準及び土壌含有量基準が土壌溶出量基準は26 種の全ての特定有害物質について、土壌含有量基準は第二種特定有害物質9物質について、それぞれ定められています。

各特定有害物質について、地下水基準も定められている。

汚染の除去等の措置を選択する際に使用する土壌溶出量の程度を表す指標として、第二溶出量基準が定められている。

土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合しない汚染状態にある土壌、すなわち、汚染状態に関する基準に適合しない土壌のことを「基準不適合土壌」という。

 

つまり、土壌汚染対策法で定められている基準値を超過することが要措置区域として区域指定される1つ目の条件と言うことです。

 

次は、「健康被害が生ずるおそれに関する基準」です。

 

健康被害が生ずるおそれに関する基準

 

土壌汚染対策法のガイドラインでは以下と同様の文章が記載されています。

 

要措置区域の指定基準のうち、健康被害が生じるおそれに関する基準は、基準不適合土壌に対する人の暴露の可能性があることを要し、かつ、汚染の除去等の措置が講じられていないこととされている。

 

人の暴露の可能性がある」の判断基準は、土壌汚染の種類(地下水を経由した摂取によるリスクの観点からのものか、土壌を直接摂取するリスクの観点からのものか)により異なり、具体的には (1)地下水経由の観点からの土壌汚染がある場合又は (2)直接摂取の観点からの土壌汚染がある場合です。

 

 

地下水経由の観点からの土壌汚染がある場合

要措置区域 地下水経由の観点からの土壌汚染がある場合

 

 

地下水経由の観点からの土壌汚染とは、土壌溶出量基準に適合しない土壌汚染です。

 

周辺で地下水の飲用利用等がある場合とは、地下水の流動の状況等からみて、地下水汚染が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域に、当該地下水が人の飲用利用に供されている等の以下の地点(土壌汚染対策法 施行規則第30条に記載されています)があることです。

 

 

土壌汚染対策法 施行規則第 30 条各号に掲げる記載されている地点は、以下のとおりです。

 

地下水を人の飲用に供するために用い、又は用いることが確実である井戸のストレーナー、揚水機の取水口その他の地下水の取水口

 

地下水を水道法第3条第2項に規定する水道事業、同条第4項に規定する水道用水供給事業若しくは同条第6項に規定する専用水道のための原水として取り入れるために用い、又は用いることが確実である取水施設の取水口

 

災害対策基本法第 40 条第1項の都道府県地域防災計画等に基づき、災害時において地下水を人の飲用に供するために用いるものとされている井戸のストレーナー、揚水機の取水口その他の地下水の取水口

 

地下水基準に適合しない地下水のゆう出を主たる原因として、水質の汚濁に係る環境上の条件についての環境基本法 第 16 条第1項の基準が確保されない水質の汚濁が生じ、又は生じることが確実である公共用水域の地点

 

 

飲用利用」については、高濃度の地下水汚染が存在する可能性があり、飲用井戸等について、飲用頻度が低いことや何らかの浄化処理が行われていることをもって安全が担保されているとは言えないことから、浄水処理の有無や飲用頻度によらず、当該地下水が飲用に供されている場合は、ここでいう「飲用利用」に該当すると考えるべきと土壌汚染対策法のガイドラインには記載されています。

 

つまり、ここで一旦整理すると以下のとおりになると私は考えています。

 

ある土地に土壌汚染が存在し、地下水を経由した摂取によるリスクの観点で地下水の流動の状況等からみて、地下水汚染が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域に、当該地下水が人の飲用利用に供されている等の井戸や地下水の取水口が存在する場合、その土地は要措置区域に指定されるということです。

 

飲用井戸の存在の確認は、行政保有情報、近隣住民用のための回覧板、戸別訪問等により可能です。

 

では、仮に土壌汚染の要因が自然由来のみの土壌汚染であった場合はどうなるのでしょうか?

土壌汚染対策法のガイドラインには以下の記載がありました。

 

自然由来のみの土壌汚染については、地質的に同質な状態で汚染が広がっていることから、一定の区画のみを封じ込めたとしてもその効果の発現を期待することができないのが通常の場合であると考えられる。

このため、かかる土壌汚染地のうち土壌溶出量基準に適合しない汚染状態にあるものについては、その周辺の土地に飲用井戸が存在する場合には、当該周辺の土地において上水道の敷設や利水地点における対策等浄化のための適切な措置を講ずるなどしたときは「人の健康に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして政令で定める基準」に該当しないものとみなし、形質変更時要届出区域に指定するよう取り扱われたい。

 

ザ・日本の法規制という感じですね。

 

 

さて、既に上述していますが「地下水汚染が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域」という表現を私は土壌汚染対策法と同様に用いて記事を書いています。

地下水汚染が生じているとすれば地下水汚染が拡大するおそれがあると認められる区域」とは、特定有害物質を含む地下水が到達し得る範囲を指し、特定有害物質の種類により、また、その場所における地下水の流向・流速等に関する諸条件により大きく異なるものです。

特定有害物質を含む地下水が到達し得る範囲に関して、環境省は計算ツールを開示しています。

以下の記事を参照下さい。

 

特定有害物質を含む地下水が到達し得る『一定の範囲』の考え方(Appendix-1)の解説2
特定有害物質を含む地下水が到達し得る『一定の範囲』の考え方(Appendix-1)の解説土壌汚染対策法のガイドライン改訂第3版の特定有害物質を含む地下水が到達し得る『一定の範囲』の考え方 土壌汚染対策法に基づく調査...

Appendix「1.特定有害物質を含む地下水が到達し得る『一定の範囲』の考え方」

 

 

 

そして、この記事の一番最初に書いていますが、「人の暴露の可能性がある」の判断基準は、土壌汚染の種類(地下水を経由した摂取によるリスクの観点からのものか、土壌を直接摂取するリスクの観点からのものか)により異なります。

 

ここからは土壌を直接摂取するリスクの観点の話になります。

 

直接摂取の観点からの土壌汚染がある場合

要措置区域 直接摂取の観点からの土壌汚染がある場合

 

直接摂取の観点からの土壌汚染がある土地については、当該土地に人が立ち入ることができる状態になっている場合に、「人の暴露の可能性がある」と判断されることになります。

 

直接摂取の観点からの土壌汚染」とは、土壌含有量基準に適合しない土壌汚染です。

 

当該土地が人が立ち入ることができる状態」には、火山の火口内等の特殊な土地や、関係者以外の者の立ち入りを制限している工場・事業場の敷地以外の土地の全てが該当します。

 

要措置区域の指定に係る要件はこれであなたもバッチリですね!

私もなんとか理解できそうです(笑)。

 

 

次は、要措置区域の指定及びその公示についてです。

 

要措置区域の指定及びその公示

要措置区域の指定及びその公示

 

 

土壌汚染対策法のガイドラインでは、要措置区域の指定と公示に関して以下の記載がされています。

 

都道府県知事は、土壌汚染対策法 第3 条第1項及び第8項、土壌汚染対策法 第4条第2項及び第3項並びに法第5条に基づく土壌汚染状況調査の結果、土壌の特定有害物質による汚染状態が要措置区域の指定に係る基準のうち汚染状態に関する基準に適合せず、健康被害が生ずるおそれに関する基準に該当すると認める場合には、当該土地の区域を要措置区域として指定し、その旨を公示する。

要措置区域の公示は土壌汚染状況調査の結果の報告を受け、指定をする旨、要措置区域、汚染状態に関する基準に適合していない特定有害物質の種類及び当該要措置区域において講ずべき指示措置を明示して、都道府県の公報に掲載して行う。

 

 

つまり、都道府県知事が土壌汚染対策に基づく調査契機により実施された土壌汚染状況調査の結果や自主調査により発覚した土壌汚染に関して土壌汚染対策に基づき提出した調査結果の報告を受け、土壌汚染が存在し、当該土壌汚染が健康被害が生ずるおそれに関する基準に該当すると認める場合、調査された土地の区域を要措置区域として指定するということです。

 

そして、都道府県知事により要措置区域が公示される際は、特定有害物質の種類及び当該要措置区域において講ずべき指示措置が明示されるといことです。

 

要措置区域の指定は、汚染状態に関する基準に適合しないと判定された特定有害物質の種類ごと、土壌溶出量及び土壌含有量の項目ごとに、健康被害が生ずるおそれに関する基準への適合性を判断して単位区画ごとに行われます。

もちろん、指定があるので解除もあります。

 

要措置区域の解除及びその公示

要措置区域の解除及びその公示

 

 

土壌汚染対策法のガイドラインでは、要措置区域の解除と公示に関して以下の記載がされています。

 

要措置区域の解除は、汚染の除去等の措置により要措置区域の全部又は一部についてその指定の事由がなくなったと認める際に行う。解除の効力発生要件が公示であること及び公示の方法については指定時の公示と同様である。

 

汚染の除去等の措置により要措置区域の全部又は一部についてその事由がなくなったと認める」とは、以下の条件が達成される場合です。

 

◆土壌汚染の除去(浄化工事など)により要措置区域内の土地の土壌の特定有害物質による汚染状態を汚染状態に関する基準に適合させることにより、当然に、健康被害が生ずるおそれに関する基準にも該当しないこととなる場合。

 

◆土壌汚染の除去以外の汚染の除去等の措置又は土壌汚染の除去の措置であって土壌溶出量基準ではない目標土壌溶出量を設定した措置により、汚染状態に関する基準に適合しない汚染土壌は残存するものの、①土壌中の特定有害物質が溶出した地下水等の飲用摂取又は②特定有害物質を含む土壌の直接摂取の経路を遮断し、健康被害が生ずるおそれに関する基準に該当しないこととなる場合。

 

後者の場合には、当該要措置区域について、その指定を解除するとともに、形質変更時要届出区域に指定する必要があります。

 

つまり、要措置区域に指定される要因となる土壌汚染が浄化されれば、指定は解除されるということです。

 

また、要措置区域に指定される要因となる土壌汚染が完全に浄化されず、当該土地に残存するものの、土壌中の特定有害物質が溶出した地下水等の飲用摂取又は特定有害物質を含む土壌の直接摂取の経路を遮断し、健康被害が生ずるおそれに関する基準に該当しない場合は、要措置区域の指定は解除され、形質変更時要届出区域として指定されることになるということです。

 

さて、気になる単語が出てきましたね。

目標土壌溶出量という単語です。

 

詳細は以下の記事を参照ください。

 

措置完了条件としての目標土壌溶出量及び目標地下水濃度について(Appendix-14)の解読土壌汚染対策法のガイドライン改訂第3版の措置完了条件としての目標土壌溶出量及び目標地下水濃度について 土壌汚染対策法に基づく調...

措置完了条件としての目標土壌溶出量及び目標地下水濃度について(Appendix-14)の解読

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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