平成31年 改正土壌汚染対策法

要措置区域外から搬入された土壌を使用する場合における当該土壌の特定有害物質による汚染状態の調査方法(Appendix-15)の解読

土壌汚染対策法のガイドライン改訂第3版の要措置区域外から搬入された土壌を使用する場合における当該土壌の特定有害物質による汚染状態の調査方法

 

土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン 改訂第3版のAppendixは参考資料として付属されており、Appendix No.1からAppendix No.25まであります。

 

土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドラインの本文を読んで、土壌汚染問題に関する調査などの知識を得るということは必須であり、環境デューデリジェンスの知識や技術の向上にも必要なことです。

 

一方で私の経験上、土壌汚染問題や土壌汚染調査の本質的な事項は意外にも付属しているAppendixに多く記載されていると考えています。

つまり、土壌汚染問題を理解する為の基礎情報や補足情報が記載されているということです。

 

なぜ、土壌汚染問題に関する基礎情報や補足情報が環境デューデリジェンスに必要かということですが、環境デューデリジェンスの結果はM&A取引を行う企業間同士で共有されます。

そして、環境DDの結果に関して議論されるわけです。

 

議論の際に当然、環境面や土壌汚染問題の知識がない担当者の方や経営層がいる可能性はあります。

そのようなケースでは、基礎情報や補足情報を丁寧に説明するということが非常に効果的であり、重要なのです。あくまでも私の経験の話ですが…(笑)。

 

更に環境省の土壌汚染調査管理技術者試験でも、Appendixに記載されている内容が問題として出題されいます。

実際、土壌汚染調査管理技術者試験の問題を解いていると、結構の頻度でAppendixを参照しています。

 

そこで、環境デューデリジェンスの知識や技術の向上を考慮して、Appendixに記載されている内容を学んでみることにしました。

 

私は海外M&Aの環境デューデリジェンスを多数経験していますが、やはり国内の環境デューデリジェンスに適用されることが多い土壌汚染対策法のルールを知っておくことは重要だと考えています。

土壌汚染対策法では○○で、海外の法規制では○○ですという例え話は、とても説得力がありますし、理解しやすいですからね。

 

今回は、Appendix No.15の要措置区域外から搬入された土壌を使用する場合における当該土壌の特定有害物質による汚染状態の調査方法についてです。

 

私なりの解釈や概要を整理していきます。

 

 

 

要措置区域外から要措置区域内へ搬入された土壌の品質管理方法

 

要措置区域では、都道府県知事は、汚染除去等計画の提出があった場合において、当該汚染除去等計画に記載された実施措置が環境省令で定める技術的基準に適合していないと認める時は、その提出があった日から起算して 30 日以内に限り、当該提出をした者に対し、その変更を命ずることができます。

実施措置の種類ごとの技術的基準(実施の方法)は、土壌汚染対策法施工規則 別表第8に定めるとおりです。

 

土壌汚染対策法施工規則 別表第8の措置の種類は以下のとおりです。

 

🔷 地下水の水質の測定

🔷 原位置封じ込め

🔷 遮水工封じ込め

🔷 地下水汚染の拡大の防止

🔷 土壌汚染の除去

🔷 遮断工封じ込め

🔷 不溶化

🔷 舗装

🔷 立入禁止

🔷 土壌入換え

🔷 盛土

 

 

すべての実施措置に共通する事項の1つとして、以下のことが記載されています。

 

土壌溶出量基準に適合しない土壌が要措置区域内の帯水層に接する場合の土地の形質の変更の施行方法が、環境大臣が定める基準に適合していることにより、人の健康にかかる被害が生ずるおそれがないようにすること

 

 

 

この環境大臣が定める方法は、「要措置区域外から搬入された土壌を使用する場合における当該土壌の特定有害物質による汚染状態の調査方法」であり、以下の記載内容が重要です

 

 

1. 要措置区域外から搬入された土壌に係る土地について、土地の地質、その利用の状況、特定有害物質の製造、使用又は処理の状況、土壌又は地下水の特定有害物質による汚染の概況その他の調査対象地における土壌の特定有害物質による汚染のおそれを推定するために有効な情報を把握することが必要です。

 

 

2. 上述の規定により把握した情報により、調査対象地を特定有害物質の種類ごとに次のイからハまでに掲げる土地の区分に分類し、当該土地の区分に応じ、当該イからハまでに定める土壌について、試料採取等の対象とすることになります。

 

2-イ 調査対象地が規則第3条の2第1号に掲げる土地の区分に分類する土地その他基準不適合土壌が存在するおそれがないと認められる土地

 

規則第3条の2第1号に掲げる土地の区分に分類する土地とは以下の通りです。

当該土地が有害物質使用特定施設に係る工場若しくは事業場において事業の用に供されていない旨の情報、水質汚濁防止法 第12条の四の環境省令で定める基準に適合する有害物質使用特定施設において水質汚濁防止法第14条第5項の規定による点検が適切に行われることにより、試料採取等対象物質を含む水が地下へ浸透したおそれがないことが確認されている旨の情報その他の情報により、土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合しない汚染状態にある土壌が存在するおそれがないと認められる土地

 

 

試料採取等の対象:5,000 m3 以下の量ごとの土壌

 

 

 

2-ロ 調査対象地が規則第3条の2第2号に掲げる土地の区分に分類する土地その他特定有害物質の製造、使用若しくは処理若しくは貯蔵若しくは保管に係る事業の用に供されていない土地、特定有害物質の埋設、飛散、流出若しくは地下への浸透をされていない土地又は調査対象地の土壌の特定有害物質による汚染状態が自然に由来するおそれがないとはいえないと認められる土地

 

規則第3条の2第2号に掲げる土地の区分に分類する土地とは以下の通りです。

当該土地が有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場において試料採取等対象物質の製造、使用又は処理に係る事業の用に供されていない旨の情報その他の情報により、基準不適合土壌が存在するおそれが少ないと認められる土地

 

試料採取等の対象:900 m3 以下の量ごとの土壌

 

 

 

2-ハ イ及びロに掲げる土地以外の土地

 

つまり、土壌汚染が存在するおそれが比較的多いと認められる土地です。

 

試料採取等の対象:100 m3 以下の量ごとの土壌

 

 

 

 次に掲げる土壌について、試料採取等の対象としないことができます。

 

浄化等済土壌

 

(認定土壌)土壌汚染対策法 第 16 条第1項の規定による都道府県知事の認定を受けた土壌

 

(オンサイト浄化済土壌)規則別表第8の5の項に規定する目標土壌溶出量を超える汚染状態又は土壌含有量基準に適合しない汚染状態にある土壌を要措置区域内に設置した施設において浄化したもので埋め戻す場合における当該埋め戻す土壌について、当該要措置区域の指定に係る特定有害物質の種類が第一種特定有害物質である場合にあっては、100 m3 以下ごとに一点の土壌を採取したもの又は当該要措置区域の指定に係る特定有害物質の種類が第二種特定有害物質若しくは第三種特定有害物質である場合にあっては、100 m3 以下ごとに5点の土壌を採取し、当該5点の土壌をそれぞれ同じ重量混合したものに含まれる特定有害物質の量を、規則第6条第3項第4号の環境大臣が定める方法又は同条第4項第2号の環境大臣が定める方法により測定した結果、土壌溶出量基準及び土壌含有量基準に適合するもの

 

規則第6条第3項第4号の環境大臣が定める方法又は同条第4項第2号の環境大臣が定める方法は以下の記事を参照下さい。

 

 

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4  試料採取等の対象とされた土壌の中心部分(当該土壌において基準不適合土壌が存在するおそれが多いと認められる部分がある場合にあっては、当該部分)の土壌を採取することが重要です。

 

 

5 採取されたそれぞれの土壌に含まれる特定有害物質の量を、規則第6条第3項第4号の環境大臣が定める方法又は同条第4項第2号の環境大臣が定める方法により、それぞれ測定する必要があります。

 

 

6 当該要措置区域外から搬入された土壌が他の要措置区域から搬出された土壌である場合にあっては、当該土壌は当該他の要措置区域内の土地の土壌の特定有害物質による汚染状態と同じ汚染状態にある土地の土壌とみなすことになります。

 

 

 

実施措置の実施に伴う搬入土壌の使用用途

 

実施措置の実施に伴い、当該要措置区域外から搬入される土壌の有無と使用用途を以下に整理します。

 

実施措置の実施に伴う搬入土壌の使用の有無及びその用途

 

 

 

汚染の除去等の措置における搬入土壌の品質管理方法の要件

 

当該要措置区域外から搬入された土壌を用いる場合、搬入土壌の汚染のおそれの区分に応じた品質管理を講ずることが必要です。品質管理要件を以下に記載します。

 

要措置区域内への搬入土壌の品質管理方法の要件

 

要措置区域に搬入しようとする土壌が浄化等済土壌認定土壌あるいはオンサイト浄化済土壌の場合、要措置区域に搬入する際に品質管理を必要とする対象ではないので、測定不要とすることができます。

 

搬入土壌の汚染のおそれの区分の判断を含め品質管理は、指定調査機関が行うことが望ましいです。

 

上述の図である【実施措置の実施に伴う搬入土壌の使用の有無及びその用途】に示した実施措置の実施に伴う搬入土壌の使用用途以外の搬入土壌についてもその品質管理はこの記事内で記載している要措置区域外から要措置区域内へ搬入された土壌の品質管理方法に準ずることが望ましいです。

 

 

 

実施措置における完了報告書への記載

 

汚染除去等計画の提出をした者は、当該汚染除去等計画に記載された実施措置を講じたときは、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に報告しなければならず、汚染の除去等の措置を行う要措置区域外から搬入された土壌を使用した場合にあっては、当該土壌に含まれる特定有害物質の量を測定した結果を報告しなければなりません。

 

当該土壌に含まれる特定有害物質の量を測定した結果を報告するにあたっては、計量証明書を添付することが望ましいです。

 

 

 

要措置区域内への搬入土壌等の品質管理方法の運用イメージ

 

要措置区域内への搬入土壌の品質管理方法の運用イメージは以下の図に示すとおりです。

 

要措置区域内への搬入土壌の品質管理方法の運用イメージ

 

 

都道府県知事は、土地の所有者等が作成した汚染除去等計画に記載された埋め戻し土壌等の搬入土(浄化等済土壌、認定土壌及びオンサイト浄化済土壌を除く。)の品質管理方法について特定有害物質ごとに搬入土壌を区分し、その区分に応じた分析頻度の要件を満たしているか確認を行うことになります。

 

 

 

形質変更時要届出区域内への搬入土壌の品質管理方法

 

 

形質変更時要届出区域において土壌汚染の除去の措置を行う場合は、措置の実施後に指定を解除できない事態を防止するため、事前に汚染除去等計画を作成し、都道府県知事の確認を受けるとともに、工事終了時と措置完了時のそれぞれの時点で、措置を講じた旨を都道府県知事に報告することが望ましいです。

 

当該形質変更時要届出区域外から搬入した土壌については、「要措置区域外から搬入された土壌を使用する場合における当該土壌の特定有害物質による汚染状態の調査方法」により当該土壌に含まれる特定有害物質の量を測定し、その結果を工事完了時の報告において報告することが望ましいです。

 

 

 

形質変更時要届出区域内への搬入土壌の品質管理方法

 

形質変更時要届出区域内への搬入土壌の品質管理方法を以下の図に示します。また、要措置区域への搬入土壌も参考として記載しています。

 

要措置区域等における搬入土壌の品質管理方法

 

形質変更時要届出区域への搬入土壌のあっては、法第 18 条第1項第3号(飛び地間移動)及び法第 18 条第1項第2号(区域間移動)に規定する土壌は除きます。

 

 

 

形質変更時要届出区域内への搬入土壌の品質管理方法の補足事項

 

形質変更時要届出区域において土壌汚染の除去として掘削除去を行い、区域の解除を行うとする場合、当該掘削除去に係る工事完了報告書において、搬入土壌の品質管理結果を報告することは、要措置区域における手続と同様です。

 

 

 

最後に…

 

今回は、Appendix No.15要措置区域外から搬入された土壌を使用する場合における当該土壌の特定有害物質による汚染状態の調査方法について、私なりに整理してみました。

 

学ぶべきことが沢山あったと実感しています。

現状でも浄化対策としては、掘削除去が一番人気だと感じています。

掘削除去となると以下の図の重要性が増します。

 

要措置区域内への搬入土壌の品質管理方法の要件

 

事前確認は忘れずにということです。

 

 

さて、私は小説を寝る前に本としてゆっくり読みたいタイプの人間ですが、勉強で読む本や参考書はスマートフォンやタブレットで通勤中にAmazon Kindleで読み込むタイプです。

以下の本を何回も参考書のように読んでいます。

 

 

 

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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